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黒澤世莉です。

時間堂『ゾーヤ・ペーリツのアパート』の演出ノートです。一回目はこちら。

稽古前の準備ってなにすんの?[演出ノート2016:00]
http://handsomebu.blog.jp/archives/52374599.html
これから演出をしたいとか、演劇をしたいとか、そういう方の参考になれば、と思って書きます。が、なにぶん演劇やり過ぎて、初心者の気持ちというものがもはや分からなくなっています。もし分かりにくいことや聞きたいことがあったら、SNSかなにかで聞いてください。参考にします。

2016年の黒澤世莉という、19年間50作品演出してきた演出家が、どんなことを考えて演出しているのか、何を良いと思って、何に困ったり悩んだりしているのか。そういうことを、誰かの迷惑にならない範囲で、素直に書いていければ、と思います。

ここに書いてあることは、何かの正解ではありません。正しい演劇の姿でもありません。演出の常識とか、演劇界の通常とか、そういうことは分かりません。あくまで黒澤世莉という演出家個人の考えですので、その点はご理解ください。


さて今回はタイトルの通りです。わたし20年くらい演劇の世界にいますけど、プレ稽古って言葉自体新しい言葉ですよね。ここ5年10年じゃないですかね。生まれたの。

うちは、やってます。プレ稽古。4月頭から5月末まで週一で8回、4時間づつやりました。写真はそのとき、フィンランドからきた演出家、ユハ・マケラさん。スピーチテクニックを教えていただきました。

プレ稽古自体はやったら良いと思うんですけど、これは企画することすべてに共通して言えることですが、なぜそれをやるのかという目的、は必要です。まんぜんと稽古日数増やしても意味無いですからね。

稽古は数じゃなく質です。

質の高い稽古を、数やること意味があります。

数が質に転化する、てのもひとつの真実だとは思いますが、それは一回一回の稽古の質を上げたうえでの話でしょうからね。

でまあ、目的はいくつかあるんですが、共有言語の獲得ですね。平田オリザさんの著作では「コンテクストのすり合わせ」て言われてました。

ひとくちに「演劇」といっても、いろいろな姿があります。演出家や劇団によっても、つくりかたや考え方が違ったりします。似ていれば似ているほど、小さな違いが気になったりしますし。

『ゾーヤ・ペーリツのアパート』は、劇団員8名プラス客演11名という陣容です。時間堂としても、演出家黒澤世莉です。としても、一公演における出演者数としては最大です。(総出演者数で上回る公演はあったけど、一度に舞台に出る人数では最大)

人数が多い、ということは、熱量のもとでもあるけど、混乱の原因にもなります。たんにルールを厳しくして規律をつくっても、窮屈だし面白くないじゃないですか。クリエイティビティあふれる現場で、かつ規律が整っている状態、て、結局前述したとおり、言語をどれだけ共有できるか、て事だったりすると思うんです。

具体的に、どう共有言語を獲得していくか、ていうと、これはいわゆる、基礎練習とリハーサルをやるしかないんじゃないかな、て思います。うちでやってるのはこういうことです。

●基礎練習
・スピーチテクニック
・フィジカルトレーニング
・マイズナーテクニック

●リハーサル
演劇についての対話
作品についての対話
戯曲読解
本読み
作品にまつわるムーブメント


これ読んで分かる通り、台本ないと出来ることが制限されます。台本書くためのプレ稽古、てのもあり得るとは思いますけど。あと、ベースとなる技術がないと出来ることが制限されます。学ぶかトレーナー呼ぶかしてください。

今回わたしが長々と考え、時間をかけて何度も伝えたことがふたつあります。「この作品をどういう作品にしたいか」という抽象的な目標設定がひとつ。もうひとつは「わたしはどういう演出家で、どういう過程で作品をつくっていきたいか」という具体的な方法のはなしがひとつ。

言葉は尽くしましたが、19人のチームにどれだけ浸透したかは、まだ未知数ですね。いまのところ問題ない気はしますが、油断はできませんから。

まとめるよ。

たんに、演劇やりたいだけなら、プレ稽古なんかやんなくていいんじゃないすかね。その作品でどれだけの芸術的成果を得たいのか、まず劇団なり企画で共有できてないと、ぼんやりしちゃって時間の無駄だと思います。

逆に言えば、企画として明確な目標があり、本格的なリハーサルが始まる前に、なんらかの共有事項を持っておきたいならば、プレ稽古は役に立つと思います。

実際に『ゾーヤ・ペーリツのアパート』でのプレ稽古が、どれほどの意味や意義があったのか、は、公演の幕が上がってみないと分かりませんね。言語の共有が出来たかどうかって、公演直前の、追い詰められた時期の、まとまりとか伸びとか、になってくると思うので。そこで伸びがなかったら、うまくやれなかってことに、なるかねえ。

言語の共有について、たまに「飲みに行ってやろう」みたいな考え方も見聞きしますけど、わたしは稽古場で完結させたいですね。飲みに行くのが悪いとは思わないけど、シーンとかだけじゃなく、話し合いとかも含めて、稽古場でつくれないとダメじゃない、て思います。

さて、次回は稽古初日の事を書くよ。「稽古初日なんてぼんやりやりすごせばいいじゃない」お楽しみに。

____________________おしらせ____________________

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【演出します】2016年の時間堂は7月の本公演とレパートリーシアターの【12ヶ月連続上演】

時間堂レパートリーシアター
6月17日(金)18日(土)『玄朴と長英』『珍珠奶茶』
at 十色庵

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【次回本公演】「ゾーヤ・ペーリツのアパート」
2016年7月29日(金)〜31日(日) 東京芸術劇場シアターウエスト
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【ご利用受付中】静謐な演劇空間「toiroan 十色庵」
http://toiroan.tumblr.com/


【ワークショップ情報】6月
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【演出家/俳優:参加者募集】ファシリテーターしますよ:ディレクターズワークショップ [大阪][8/15~18]
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