1月4日金曜日、イランを発つ日。
昨夜相談して、ムサビが「チェックアウトは14時だけど、何時でもいいよ」と言ってくれたので、お言葉に甘えて宮殿を目指す。その前に郵便局に行こうと思ったら、金曜日はお休み。困った、絵葉書が出せない、これは由々しき事態である。絵葉書が送れないことにはイランに行った意味が無いくらいに感じる。むむむ。

タジリシュまで行って、サーダーバード宮殿を見ようと思う。宮殿より庭園に興味があってね、ペルシャの庭園はキレイだからね。タジリシュはムハマドもお勧めしてくれてた街だから、ひとつ行ってみようじゃないかと、イマームホメイニー空港からLINE1に乗る。イマームホメイニ広場も心なしか人が少ないのは、金曜日の祝日だからかしら。

ながなが揺られてタジリシュ到着。山の手って感じ。テヘランの北側がアルボルズ山脈よりで標高が高く、南側が低いんだけど、そのまま所得の高低差と繋がってる。東京の山の手と下町みたいで興味深いね。タジリシュは山の手の臭がする、成城学園的な。

人気のあるスープ屋さんがあって、そこでスープを食べる。そしてサーダーバード宮殿行きのバスを探すが、タクシーに乗れとすげない返事。バスで行く事に執着していたのでがんばるが、無理。結局タクシーで行くが、タクシーの中で他のお客さんがすげえ剣幕で怒り始めて、居心地の悪さを楽しむ。そのお客が降りたあと運転者がペルシャ語で「あいつ頭おかしよ」みたいなこと言ってたのが面白かった。

で、タクシーを降りたら、そこは岩山だった。宮殿とか庭園て雰囲気じゃないよ。ここ、どこ。
よく分からないけど、せっかく来たんだし、登ってみよう。

周りのひとは登山フル装備のひともいれば、おしゃれカフェにお茶飲みに行くような女子もいれば、コンビニ行くような格好のひともいれば、いやコンビニないけどテヘラン、みんな楽しそう。岩山の参道が猛烈に商店街化してて、商店街っていうか喫茶店街っていうか、すげえ細い登山道に無理やり店を作ったようなところが何件も何件も軒を連ねてる。

昨日のラヴィザーンが物足りないとか思ったからか、たっぷりに時間登ってもまだ登頂できない。自分がどこにいるのかさえ分からずにずんずん登って、ペルシャ語のサインは何一つ分からず、ただ数字だけが標高2100メートルを超えていると知らせてくれている。そんなところで出会ったのがホマさん。

ホマさんたちは女子大生で、テヘランの大学で勉強しているそうだ。たまたま英語で話しかけてきてくれた。イラン人の女性と関わる機会がなかなかないなーと思っていたら、願ってもない機会到来。そのまましばらく登って、登頂まではあと2時間と言われてそれは帰りの飛行機に間に合わないかがするので、一緒に帰ることにした。宮殿に行かなくて本当に良かったよ。タクシーの運転手さんありがとう。

どうやら私がいた場所は、ダルバンド山のシーパラというところ、らしい。結局良くはわからない。テヘラン人は週末、家族や友達とここに来て楽しむそうだ。高尾山的なやつの、もっと週末といえばあそこだよね化したところか。低いところは普段着で、てか女子はみんなブーツとかで登ってた。登山用じゃなくて、黒のロングブーツとか。泥だらけにしてたよ。たしかに、ペルシャ絨毯とか、シシャとか、キャバーブとか、ポットとチャイとか、持ち込んで思い思いに楽しんでたわ。てか、かなり寒いよ、ここ。みんな寒いの平気なの、て思ったよ。

英語が喋られるのはもっぱらホマさんだけなので、会話はホマさんとしてた。ホマさんは私より歳上な感じで、あとの二人は若者で、なんだか音楽がなると踊りだすような人だった。

ファヒーメさんはペルシャンダンスとアラビアンダンスをやってるらしく、頼んでないのに勝手に踊ってた。個人的に、女子大生がペルシャンダンスを踊るさまはぜひ観たかったので、とてもありがたい経験となった。お上手だったなー。

イラン人は、わりと知らない人とよく話す。もてなし好きなんだろうな。ファヒーメさんも、休憩中に果物向いたりしたとき、見知らぬ通りがかりの人に「一個どう?」みたいに話しかけてた。誤解を恐れずに言えば、すげえいい意味で昭和っぽいな、テヘランは、てよく思った。そんな昭和はないんだけど、三丁目の夕日にしか。

下山してファヒーメの車でタジリシュ駅まで送ってもらって、ホマさんが送ってくれるというので、色々話しながら帰る。イラン人じゃないと行かないようなお店で買い物させてもらって、良かった。

ホテルに帰ってシャワーを浴びてパッキング。スカスカがパンパンになる。もうダメかと思ってたけど、入りきって良かった。チェックアウトして、ムサビにポストカードを託す。
彼のアドバイスに従い、安いルートで空港へ向かう。メフラーバードからバスに乗るより安いっていう、本とかね。再び地下鉄LINE1でシャヘド駅まで行って、そこで空港行きの乗合タクシーを捕まえればいいよって言ってた。そのとおりにしたら、50万リアルとふっかけられたので、ほかの運転手に話して12万になった。基本的にテヘランのタクシーは乗合で、チャーターすると高くなるから、12万はまあ妥当かなって感じ。