アゴタ・クリストフが2011年7月26日に亡くなった。この訃報と前後して、小松左京、レイハラカミ、伊良部秀輝も亡くなった。

アゴタ・クリストフは「悪童日記」で有名な亡命ハンガリー人作家で、読書好きには有名。もういい年だとわかっていたし、新作がバンバン出る作家でもなかったし、それほど興味があると思ってなかったんだけど、亡くなったと聞いて、他のいろんな訃報があるにも関わらず、彼女のことばかり気になった。どうやら好きだったみたい。




というわけで戯曲集「怪物」と「伝染病」を読んだ。それぞれ5編、4編の短編戯曲が収められている。戯曲は小説とは違って、不条理や、現実から浮遊したようなものが多い。書かれた年代としては70年代から80年代で、悪童日記よりだいぶん前になる。

「怪物」と「贖い」「ジョンとジョー」「星々を怖れよ」はもともと好きで、相変わらずいいなあと思って読んだ。「エレベーターの鍵」はゾッとするというか、こういうの苦手で気持ち悪くなってしまう。昔はあまりピンと来なかった「道路」「鼠が通る」「伝染病」「灰色の女あるいは最後の客」も、新しい発見があって、面白く読めた。

とくに「怪物」は、未知の怪物と原始的な部族の物語で、もともと好きだったのだけど、いま読むと非常に身につまされる。以前は怪物を政治的、文明的な文脈で怪物を捉えたけど、いまとなっては原発としか思えない。しかも劇中での怪物は突然現れているが、現実の怪物は人間が自らつくり出してしまったのだ。あまり書くとネタバレになってしまうので、このへんで。

いま上演するなら「怪物」しかない。

翻訳をされてる堀茂樹さんがTwitterにいらっしゃいますよ。
http://twitter.com/hori_shigeki

「悪童日記」を翻訳して出版社に直接持ち込んで出版に漕ぎ着けた方です。いま日本語でアゴタ・クリストフの作品群が読めるのは堀さんのおかげです。しかも、戯曲集は(後書きによれば、なので今は違うかもしれませんが)フランス語でも発売されてないそうなので、日本語でしか出版されてないそうです。ウッヒャーそんなことあるの、て感じですよね。堀さん、ありがとうございます。