「ハンサム部」こと旅する演出家:黒澤世莉blog

Director Seri Kuroawa's blog / 旅する演出家 黒澤世莉のblog

カテゴリ: 読書

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MacBook Air late 2010は、メモリー不足だしそろそろ新調しないと作業が滞るなあ、という話はよく書いていますが、昨日の〆切2本を今日思い出すにあたって、自分のメモリー不足が深刻な黒澤世莉です。人間はメモリー増設できません。

というわけで、本日はひさびさに読んだ本でも紹介しましょうかね。


ミハイル・ブルガーコフ「犬の心臓・運命の卵」

面白かったです。読みやすい中編二作品。
ブルガーコフちゃんはそうとうへそ曲がりだったんだろうなー、て思います。ちょいちょいヒドいギャグを挟み込んでくる。けっこう笑えないレベルでやってる。えーそこまで書いちゃうんだ、みたいな。メイエルホリド、殺してるし。作中で。しかもそのあと、スターリンに粛清されて死んじゃうメイエルホリド笑えない。。。

正直、当時の体制批判が盛り込まれていると、あとがきや批評では読みましたが、どこまでそれが分かったかと言われると怪しいレベルの理解です。

考えちゃうのは、それソビエト政権下でやってるっていうのがすげーな、と。マヤコフスキー殺されてるし。ふつーに命がけでしょ。

こっからさきは研究でもなく印象論です。

ブル先輩、義憤とかではなさそうなんですよね。ほんとに書きたいから書いてるんだろうなあ。上流スラブ民族の古き良き文化が失われて、わけのわからない灰色の無教育無教養無分別な酔っぱらいがえらそうにふんぞり返って、住み心地のいいアパートを侵略してくる。それが許せない、ていう、すげー個人的な動機を感じる。

それに対して、命がけっていうのがすごいなーって。かっこ良くないですか。義憤や、世界のためじゃなくて、自分の世界のために殉じるって。昔の文士や演劇人はすげーなー、て素直に感嘆します。

「ゾーヤ・ペーリツのアパート」もそうですし、他の戯曲もそうですけど、とにかく、自分のアパートにプロレタリアートが入ってくるってことに対して、登場人物がつねに嫌な顔をする描写が出てくるんですが、もう出て来過ぎなんで、よほどそれがイヤなんだろうなって思います。

でもね。

これって見方を変えれば、住む場所のなかった人間たちが、家、つうか部屋、を手に入れられたわけだよね。世の中の状況が変わったおかげで。その前の時代だったら、寒空のもとロシアの冬で死んでたかもしれないわけだよね。

そもそも上流階級たちは、労働者つうか奴隷階級を支配していい生活をしていたわけで。だから上流階級は余裕があったわけで。

ソビエト政権下の政治が良かった、とは全然思わないけど、じゃあ帝政ロシアのほうが優れていたかって言われると、そうかなあ、て首を傾げるよね。

これ、リリアン・ヘルマン「森の別の場所」やってたときも思った。1880年のアリゾナの話だけど、南北戦争の後で、南部の上流階級が落ちぶれてるのね。古い暮らしにしがみつこうとするんだけど、そしてそれが甘美で優れたものみたいに書かれているんだけど、黒人奴隷の上に成り立った暮らしだからねえ。そりゃ、ダメでしょ。今視点で見たら。

「桜の園」もそういう視点で見たらダメよね。農奴搾取してっから成立するわけで。

もちろん、搾取される側にも「古い文化の方がいいわい」って人もいたわけだけど。

とりとめもない話になっちゃったけど「あのころは良かったわねえ」みたいなこととか「いまの世界はどうなっちまったんだ」みたいな考え方っていうのは、あやうい発想だなって思います。べつに共産主義を肯定するわけじゃないけど、生まれながらに立場が固定されていて、本人の努力では解決できないことに縛られてる世界は、ダメだと思うのよ。

今現在のわたしたちの生活だって、貧しい国の児童労働者の低賃金労働で成り立ってる部分てきっとある。いますぐそれを解決できるわけではないけど、そういう世界に生きていて、それを変えることが必要なんだ、て思って生きています。私は。

ま、自分がサバイブするので精一杯ですけどねっ。いま。まあ、まずは自分が生き残らないとね。

しかし、ブルガーコフ先輩のように、命がけで演劇出来るのかなあ。そんなことをつきつけられた読書体験でした。

時間堂「ゾーヤ・ペーリツのアパート」も面白いから見に来てね。7月29日〜31日東京芸術劇場シアターウェストだよ。

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黒澤世莉です。ようやっと読み終わったよ。面白かったです。

憲法制定のところは特に面白かった。GHQの若くキラキラした青年たちが、ほんとうに必死こいて作ったんだろうな、ていう様が目に見えるようで。日本政府のウダウダやってりゃなんとかなんだろ的態度がバッサリ切り捨てられるさまには痛快ささえ覚えた。

日本人が天皇制についてクールだ、ていうところも面白い。マッカーサーとGHQがそのまま大本営と翼賛体勢にスライドしてきたのも興味深い。

結局、敗戦後の日本政府もGHQも、天皇陛下の戦争責任追求と、官僚機構の改革をしなかったために、奇跡的と言われる復興は成し遂げたものの、日本の抱える本質的な問題点はまったく解消されなかった。そう理解しました。

この本に書かれている、戦時中から占領時の「集団としての日本人」の態度と、私が知っている現代のそれは、まったく同じものに思えます。そしてそれは、けっこう落ち込ませてくれます。そういう現実を受け入れて、変化を求めていくしか無いわけですが、こりゃ戦う相手は根深いもんだ、て思いましたね。ひー。

わたしの少ない読書歴では、日本人の作家のドキュメンタリーは、情緒的になりすぎていると思うことが多いです。アメリカ人やドイツ人のほうが、科学的で冷静に書いていることが多い気がする。そして、むしろ科学的なものの方に、より作家の愛情を感じる気がします。情緒的なものは気分で書けるけど、科学的なものはたくさんの資料にあたって分析し続ける粘り強さが必要だし、それって結局対象への愛情がないと続かないのかなー、なんて思いました。

もちろん西洋人で情緒過多になってるものもあるけどね。あくまでわたしが出会ってきた本の、少ない母数の中で思ったいいかげんな傾向ということで。

慰安婦問題とか、領土問題とか、いろいろありますが、まず太平洋戦争とその直後の日本のことを知るのは、大事なことかと思います。あれどういう戦争で、その後、日本という国に何が起こり、復興したのか、ていうのは、意外と知られていないし、知らないとまずいこと、なんなら義務教育でマストな部分だと思います。なかなか学校で学べないので、おとなになってからでも勉強しましょう。大人の勉強、楽しいですよ。点数もつけられないし。居酒屋で話すネタも増えるし。

おすすめです。



____________________おしらせ____________________

黒澤世莉 (時間堂・演出家) のプロフィールはこちら
http://jikando.com/member/seri.html

演劇ワークショップ講師
http://jikando.com/workshop.html
■東京
[演技:オープンクラス]
4月 13日(月) 19:00〜22:00
4月 19日(日) 9:00〜12:00

[演技:中級クラス]
4月 9日(木) 19:00〜22:00

オーディション
http://toyohashi-at.jp/news/news.php?id=69
【4/17〆】高校生と創る演劇『赤鬼』出演者&高校生スタッフ募集

新作書きおろし・演出
東京ハートブレイカーズ「スーパーエンタープライズ」
http://www.tokyoheartbreakers.com/
2015年4月29日(水・祝)〜5月3日(日)
吉祥寺STAR PINE’S CAFE

時間堂がつくった、演劇をみるつくる体験する場所「toiroan 十色庵」リノベーションの記録。気軽に遊びに来て下さい
https://note.mu/jikando

黒澤世莉です。読書がすすむお正月ということで、おすすめマンガをご紹介しましょう。




言わずと知れた「マスター・キートン」の新作です。浦沢直樹は当代一のコミックメーカーだと思いますが、やはり最高傑作は「マスター・キートン」シリーズでしょう。「パイナップル・アーミー」や「プルートゥ」も好きだけどね。

久しぶりの新刊、というよりは、出ることなんて期待していなかった新刊、ということで、新刊が出るぞと聞いた時にも眉唾に思っていましたが、本当に出たんですねえ。

平賀キートン太一さんも、年をとって丸くなったからか、人死にも少なく、マイルドな味付けになってます。考古学パートに重きが置かれて、ミステリパートはほどほど。物足りないといえば物足りないけど、いいんです、また読めたっていうだけで。

個人的にはチャーリーに登場して欲しかったですが、ま、多くは望みません。新作が読めただけで万々歳です。ママのラザニアを食べたいです。はい。




以前にもこのブログでお伝えした、いま読むべきマンガってやつですね。「岳」が好きなひとなら間違いなくおすすめできます。音楽をマンガで伝えるってのは「のだめカンタービレ」でも「BECK」でもやってますが、意外と相性いいと思うんだよね。

「マスター・キートン」も「BLUE GIANT」も、連作っちゃ連絡ですが、一本一本が渋めの人間ドラマなので、拾い読みだけでも満足感が高いところがいいところです。

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「どちらもコンビニで買えます。気軽に手にとっちゃってください。」てせんとくんも言ってます。ウソです。

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ワークショップ情報
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【緩募】フランス革命、ナポレオン戦記、アメリカ独立戦争、南北戦争を題材にした面白い読み物をおしえてください

https://twitter.com/serikurosawa/status/305872741624578050
http://www.facebook.com/seri.kurosawa/posts/516590755060437

こんな書き込みをしたら、たくさんたくさん資料をオススメいただいたので、みなさんと共有します。これが集合知だー。みなさま、ありがとうございました。

RT @ckkotetsu 文学ならば、オルツィ夫人の『紅はこべ』(The Scarlet Pimpernel)もありますね。

RT @ckkotetsu: ベルばら?レミゼ?冗談はさておき…昔、小学生だった頃読んだフランス革命の上下二段の本が未だに分かり易く詳しかったけど…何しろ小学生だっから…誰の本だったか…桑原武夫の中公文庫、世界の歴史〈10〉かなぁ…史学科だけど、日本近代史先行だからなぁ…

RT @teroko_blue: 読み物じゃないですが、DVDで「宮廷画家ゴヤはみた」がよかったです。当時の宗教諸々についての理解が深まりました。

RT @shige_magara: 初めまして。突然失礼します。先日「テヘランでロリータを読む」観ました。面白かったです。フランス革命の本で「死刑執行人サンソン」(安達正勝:著)が面白いです。正史というよりフランス革命の裏舞台の話で新書ですが、伝記のようで読みやすいですよ。

RT @oko50525: 南北戦争は「風とともに去りぬ」、フランス革命は「レ・ミゼラブル」くらいしか思いつかない。。。佐藤賢一氏はフランス革命でシリーズ出してるみたいよ(史実に沿ってるかはわからないけど)。佐藤氏の「双頭の鷲」は面白かったわ。

以下Facebook

Wakana Iwata フランス革命、漫画なら王道は「ベルサイユの薔薇」あと木原敏江さんの「杖と翼」、小説なら、日本人が書いたものだと、佐藤賢一さんの「小説フランス革命シリーズ」、外人だとツヴァイクの「マリーアントワネット」。南北戦争は「風とともに去りぬ」の小説が、有名ですがやはりオススメ。長さをものともしない面白さです。今ざっと思いだせるのは以上ですが、また心当たりがあればコメントします。

YO Morozumi Twitterで書きましたよー
追記としてはトルストイの「戦争と平和」がナポレオン戦争。
トルストイのおじちゃんは好きです。

Masato Kaji ベタかつブームに乗っててアレですが、フランス革命後かつナポレオンの衰退後の庶民の生き様を描いた「レ・ミゼラブル」

Juichi Showno ベルばら!!ベルばら!!

Takahashi Mihoko 遠藤周作の「王妃マリーアントワネット」は如何でしょうか・・・。

Hiroaki Goto アメリカ独立戦争関連では、王道をだいぶ逸れますが、トマス・ピンチョンの『メイスン&ディクスン』。独立戦争直前くらいのアメリカを舞台に、実在の人物を主人公にしてはいるけど、荒唐無稽で、弥次喜多とか、レーモン・ルーセルとかの味わいもあり。大長編で僕も完読してませんが…。

さらにそれ以前のアメリカ植民地時代を舞台にした「偽歴史もの」メタフィクション小説として、ジョン・バースの『酔いどれ草の仲買人』もすごく面白いのでお勧めです。

フランス革命を題材にしたものでは、チャールズ・ディケンズの『二都物語』とか、ヴィクトル・ユーゴーの『九十三年』とかが一般によく知られた作品だと思います。

あとフランス革命と言えば個人的には、反革命勢力の「ふくろう党」とか、そのリーダーのカドゥーダルに興味があります。つまりブルターニュのテロリスト集団ですね(『九十三年』の内容とも深く関連あり)。ふくろう党についてはバルザックにも小説があります。

フランス革命関連、カルペンティエールの『光の世紀』もありました。主人公の名前はビクトル・ユーグという青年。カルペンティエールの作品には、革命を主題にしたものが多数あります。

Motoko Kato 私もディケンズの「二都物語」を思い出しました。 ここに出ていないのだと、ストウ夫人の「アンクルトムの小屋」が南北戦争前のアメリカだと思います。 面白いかどうかは別として、アメリカの歴史なら、猿谷要さんの書かれたものをを読むようにと学生時代に言われました。


いまさら太宰治なわけですが。

先入観があって、あんまり好きではなかったのです。「自殺しちゃった文豪」っていうパブリックイメージが、ナルシストの塊みたいに思えて。今思えば、なんで小説家は自殺しちゃうとナルシストきもいみたいに思ってて、ロックンローラーは夭折カコイイ、ってなるのかなあ自分の思考、と不思議でならないです。

当たり前だけど面白かった。「ギロチンギロチンシュルシュルシュー」とか、好き。日本語の選び方の品が良いし、趣味がいいなあと思うんだけど、やっぱりキザすぎてあんまり好きじゃなかったです。

青空文庫で読めます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/card1565.html

AndroidとかiPhoneのひとは青空文庫でいろんな本読んだら楽しいよ。いまは宮本百合子「婦人と文学」を読んでます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000311/card2927.html

しっぽをつかまれた欲望 (1978年)

作/パブロ・ピカソ 翻訳/大島 辰雄

ピカソの戯曲。というだけでもう興味津々で読んでみた。

結論。つまらん。

難解つーかダダつーかイミフ。それで面白ければ良いけれども、面白くない。

サルトルとかドラ・マールが出演してたってエピソードは面白かった。
私はつくづく、ふつうのお話が好きなんだなあ。ぶっ飛んだものとかイメージの奔流とか、そういうのが好きな方はいいんじゃないでしょうか。

最近読んだ本
戯曲「フェンス」オーガスト・ウィルソン
面白かった。

戯曲「オデッセイ」デレク・ウォルコット
あまり趣味に合わない。長い。

戯曲「相寄る魂」ギィ・フォワシィ
流し読み。訳が良くない感じで入れなかった。装丁とかがあんまり良くない、ホントは面白い可能性を感じるのでまた読むかも。

「満州裏史」太田尚樹
まあまあ。なんとなく著者の情報のさばき方が恣意的な印象だけど、つまらなくはなかった。

「災害がほんとうに襲った時」中井久夫
語り口が軽妙で、良い意味でブログ読んでるみたいな気分で読める。裏話みたいな所が面白い。

「震災トラウマ」和田秀樹
著者が精神病業界に対してどう思っているのかみたいな部分が面白かった。日本はどんな分野にも、縦割りが進んじゃってるのよねえ。柔らかいやり方で、この社会の硬化を解決できるのだろうか、なんてほんの趣旨と全然関係ないこと考えた。

ジャン=クロード・カリエール「マハーバーラタ

面白かった。インドの神様とか、神話の人間たち、もうメチャクチャ。
3時間x3幕で、通し公演9時間。

多神教の国の日本人としては、こういうの日本の神話でできないかなあと思った次第。

ハリウッドの反逆」エリック・ベントリー

これも面白かった。ちょうどアーサー・ミラー自伝とかリリアン・ヘルマンとか、読んだ後だったのもあって、1920年から30年を舞台にしたものを摂取した後だったし、興味深さもひとしお。

20世紀アメリカで、マッカーシズム吹き荒れる中、実在した資料を編纂し戯曲の形式に仕立てた作品。
今では共産主義やマッカーシズム、非米活動委員会という言葉にピンと来ない人も多いかなと思うけど、サラっとでも背景が分かったら面白いのよ。

すげー簡単に言うと
「第2次世界大戦が終わってアメリカとソ連が案の定超ケンカ状態になって、冷戦ね、でアメリカでは第二次大戦前から共産主義ってイケテね?ていう流れとマジ無いわ共産主義っていう流れがあって、でいろいろあって『ほんと共産主義者、社会的に抹殺しますww、就職とかあきらめてwww、ちょっと怪しい奴も覚悟しろwwww』みたいになってアメリカオワタ」みたいな時代だったのね。

その非米活動委員会での、ハリウッドセレブ達の言動が面白いの。作者の意図のあるられるの仕方で、人間のいろんな面が浮き彫りになる。

物語としては弱いかもしれないけど、人間を多面的に描いているので面白い。


ヒザイ推薦で「コペンハーゲン」を借りたよ。たまたま図書館で「デモクラシー」も借りてたので、同時に読んだ。面白かったなあ。新国立劇場でやった公演も評判だった「コペンハーゲン」の方が、より好みにあった。

「コペンハーゲン」
男2女1の三人芝居。
物理学者ボーアとハイデルベルクを巡る、ナチスドイツの兵器開発にまつわる物語。
不確定性原理を暗喩に「自分が何をしているのか、誰にも分からない」ことを静かに訴えかける。

マイケル・フレインの軽妙で皮肉っぽい語り口に、小田島訳がよく合っている。
軽くサクサク読める部分でリズムができるので、論理的で難解な部分も飲み込みやすい。
鮮やかな伏線の貼り方といい、間口の広さと奥行きの深さといい、大変良く出来た戯曲。

構造としてはアーサー・ミラーの「転落の後で」を思い起こさせる。
現実の存在ではないものが過去を回想する、時間軸がゆれるところがそう思わせるのかしら。
「転落~」と比べ、短い台詞が中心となっている所が時代が進んだんだなと感じさせる。

科学者同士の理屈っぽいところの微笑ましさはデイビッド・オーバンの「Proof」を思い起こさせる。
やー、いつかやってみたいなあ。

「デモクラシー」
マイケル・フレインの名作戯曲。男だらけの政治とスパイの話。
20世紀半ば、ナチスドイツの時代から立ち直りつつある西ドイツで、40年ぶりに社会党の首相となったヴィリー・ブラントと、その秘書で東ドイツスパイのギョームの物語。

「コペンハーゲン」と同じく史実を元にした戯曲。
政治を、それも稀代の偉業を成し遂げて、後のベルリンの壁崩壊に繋がる楔を打った政治家の首相時代をモチーフにしているので、ドラマチックであることは間違いない。
人民に対して博愛だが、親しい人を愛せないブラントという人物造形が秀逸。

2011年8月の日本では、菅首相に辞めろ辞めろと言い募るマスメディアやソーシャルメディアの声を連日飽きるほど聞いている。
去年も鳩山さんに、その前も麻生さんやら福田さんやら、まあ小泉さん以降誰に対してもそうだった。
次の首相も、敵対政党やマスやソーシャル、挙句の果ては味方の政党から批判されて1年でやめるだろう。

政治家はいつの時代も、偉大なことをやっては叩かれ、愚かなことをしては叩かれ、大変だなと思った。

***

マイケル・フレインは、チェーホフの訳をやってる。そのまた訳した上演を見たことがあるんだけど、それはあんまり感心しなかった。まあ孫訳なんだからね、とその時は思っていたのだけど、印象は良くなかった。もう完全に印象が変わって、大好きになったよ。

どっちも面白いです。




あと、どっちも後書きが長すぎる。いや面白いからいいんだけど。

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