戯曲も演出も演技も、それぞれは悪くないが、ばらばらになってしまった。対話はともかく、独白が問題。挑戦は買うが「弘前劇場の作品」とよぶには疑問がのこる。

@東京芸術劇場小ホール22004年10月24日日曜日1400観劇
個人的好きな劇団ランキング1位の弘前劇場だが、今回はいまいち。

別役実、じっさい観劇するのは初めて。たしかに不条理劇だ。宮沢賢治への敬意であふれている。文字で読んでも面白くなさそう。物語を追いづらいので、演出しだいで傑作にもなるかもしれないが、失敗すると凡作を通り越して駄作になる危険が大きい気がする。

演出。難しい戯曲を凡作でおさえたことは、評価すべきかしないべきか。弘前劇場らしいつくりかただとは思うし、おかしな工夫をしなかったことは評価したい。だが演技の調整ができきっていないというか、いつもの調子でやればいいところを、はやり形を追ってしまっているように見受けられ、そこは演出家が調整したほうがよかったのではないかと。比較的調整のついている対話場面は面白くみられるのに、独白場面はかなり退屈。弘前劇場の方法論は独白を最適化していないためとおもわれる。この短期間で、長年つちかった対話の作り方に比肩する独白の方法を獲得するのは無理だ。

出演者。長谷川、畑澤両氏の言葉は、比較的俳優に優しい。彼らの言葉に慣れ親しんでいると、別役氏の言葉を血肉に落とし込むには時間がかかるだろう。よく健闘しているとは思うが、成功とは思えない。

美術照明音響など。良い、が、とりたてて褒めちぎるほどでも。工夫の割に琴線に触れない。

料金や場所。挑戦は評価するが、挑戦に3,800円を払うのはイヤだ。もっと挑戦なら挑戦らしくやりようもあるだろうに。芸術劇場小ホールと弘前劇場の相性は良くない気がする。もっと小さい空間でやってほしい。弘前から東京まで、長期間いられないのはわかているのだけれど。

総評。あまり面白くない。ボラーノの森の後は特に。しかし、弘前劇場が自分たちの得意とするところにとどまらず、常に新しい表現を模索する姿勢は大いに評価したい。いつかこういう他の作家との、あるいはこれからは他の演出家ということもあるだろう、そういった交わりの中で、今まで以上に素敵な作品を生んでくれると信じている。

追記。宮沢賢治はたくさんの映画、舞台になってはいるが、面白いものを観たことがない。宮沢賢治原作で面白い作品を教えてください。