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ほぼ2ヶ月ぶりの黒澤世莉です。すっかり冬ですねえ。

観てからだいぶ時間が立ってしまったが、人生ベスト5の演劇体験だったので、簡単に感想を書きます。

ナシーム・スレイマンプール × ブッシュシアター
『NASSIM』(ナシーム)
https://www.festival-tokyo.jp/18/program/nassim.html

わたしの観劇後のTweetはこちら。





関連記事も面白いですよ。
「ナシーム・スレイマンプール×ブッシュシアター
 対立が進む世界で演劇ならではの「寛容」のススメとは」
https://www.festival-tokyo.jp/media/ft18/nassim

さて、いきなり余談から入りますが、観劇後にコンビニで用事を済ませて自転車に乗ると、ナシームさんがスタッフさんと歩いてて、一旦通り過ぎたんだけど意を決して戻ってご挨拶しました。柄にもなくドキドキしてしまった。

閑話休題。

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さて、作品について。

何を書いてもネタバレになる系の、ドキュメンタリー演劇です。
ざっくり当たり障りのないことを書きます。

出演者は毎回違う、まだ「ナシーム」を上演したことも観たこともない人が一人。ナシームが書いた「台本」を、マイクを持って「読む」を中心に、いろいろな「指示」に従っていく演劇です。90分。

これだけだと何が面白いんだよ、てなりますよね。

ネタバレにならない範囲で、私が素敵だなと思った点を箇条書きにすると以下になります。

・その場で起きている出来事のみで構造が成立している
・演者、観客とのコミュニケーションの質が高く、量が適切である
・テキストが練り込まれ、演者や上演場所によって柔軟に変化できる上、演劇的企みは高い確率で成立するよう構成されている
・現代のイランという、世界から見ても特殊な状況にある国で、不利な点にしかならなそうな要素を逆手に取って、特殊な演劇形式の獲得に成功している
・極めて個人的な物語が展開されるが、観客にはそれゆえに普遍的な物語として受け取られる


私が志向する演劇は、Tweetにも書いたとおり「鍛えられた俳優たちと長い稽古を経てつくりあげる演劇」だ。ただ、2年前に劇団を解散し、一人で演劇と向かい合う時間が積み重なっていくにつれ、「最小単位の演劇」というものについて考えるようになってきた。

「NASSIM」は「最小単位の演劇」の傑作だった。
舞台上には物語があり、コミュニケーションがあり、登場人物の深い背景が刻み込まれ、それゆえにある行動を取らざるをえなかった。
その行動の結果がこの作品のラストなのだとしたら、世界や人間に、もうすこし希望を持ってもいいんじゃないかと思えた。

ネタバレ出来ないと出来損ないのポエムにしかならんので、観た人、連絡ください。現実世界で語り合う会を開催しましょう。