51
越寛生という演劇人がいます。まだ20代中盤の、作家・演出家・俳優です。彼の作品をいつも公演を楽しみにしている黒澤世莉です。

(劇)ヤリナゲ『緑茶すずしい太郎の冒険』を拝見しました。今回も満足だったので紹介します。くわしい公演情報は最後の方に。その先にネタバレを書くよ。

まず笑えていいですよね。どうでもいいところから、黒い笑いまで、笑いを取り揃えている。見やすい。

越さんはトリッキーな筆をてきとうに遊んでいる「風」で書いたほうがいいんだろうな、て今作を観て思いました。最近は引き算に振りすぎてたけど、今回くらいのポップさというか、雑然とした構成のほうが生きる気がします。

それもミニマリズムに振った後だからこそ、演技演出やシーン自体の力強さが増したってことは有るんだと思います。ごまかしが減ったというか。だから挑戦は無駄じゃなかったんでしょうね。

雑然と乱暴に配置されたモチーフが、見事な円環構造で落ちる気持ちよさがありますね。前に不満だった、一つ一つのシーンの密度の薄さは、今回は全然なかったです。全シーン楽しめる。

ただ、一部冗長だな、って思うところはあります。涼しい太郎が対話するところは、ああいう個性の人物だとしても、もう少しタイトにしたほうが、全体のドライブ感が増していいと思います。

あーでもねー、そういうテクニカルは実はどうでもいい。いちばんの痺れるポイントは「他人の痛みには鈍感なのに自分の痛みにはすげー敏感なひとたち」を見事に活写してるし、それぞれの人物に愛があるのがいいなって思います。

人間は愚かだけど愛おしいよねえ、ていう、そういう根っこの部分がとても愛せる。

俳優もみんないいし、てことは演出がいいと思うんですけど、花子の三澤さきさん、お顔が面白くてよかったです。日本のラジオでもよかったので、いい俳優さんなんでしょう。

いい演劇だと思います。オススメ。

そういえば、最近テクニック的には全然違うけど、観劇後感が似てるいい作品があったなって思ったんですけど、弦巻楽団「サウンズオブサイレンシーズ」でした。札幌公演4月13~18シアターZOOですんで、みんな札幌観光のついでに行ったらいいよ。定山渓温泉とか豊平峡とかオススメだよ。

弦巻楽団「サウンズ・オブ・サイレンシーズ」
http://tsurumaki-gakudan.com/?p=2144

ヤリナゲのはなしが弦巻楽団の話になってしまい最後は温泉になってしまった。
ヤリナゲ、あとはネタバレ。


越くんが北運動公園のアスレチックで楽しむ様子です。公演とは一切関係ありません。


明日から横浜STスポットでヒューマンアカデミー横浜校の進級公演ですが、再来週にはレパートリーの公演なんだよね。

時間堂レパートリーシアター:4月15日(金)16日(土)『人の気も知らないで』『ロミオ中止』at 十色庵
http://handsomebu.blog.jp/archives/52365685.html

あっというまに7月の「ゾーヤ・ペーリツのアパート」の公演を迎えて、2016年も終わるんだろうな。あっというまに死ぬんだろうな。

35

(劇)ヤリナゲ『緑茶すずしい太郎の冒険』
http://yarinage.wix.com/home
佐藤佐吉ユース演劇祭参加作品

「産むべきか産まざるべきか、それが問題だ/か?」
2014年3月荻窪小劇場にて初演され、賛否両論を呼んだ問題作を、「母と子」にクローズアップして改定!「出生前診断と中絶」に後ろめたさとナンセンスをまぶした、「ボーイ・ミーツ・マザー」な物語。

2016年3月24日(木)-28日(月)
王子小劇場
作・演出:越寛生

出演:
 浅見臣樹
 伊岡森愛
 岡本セキユ
 國吉咲貴
 津枝新平
 中村あさき
 三澤さき
 四柳智惟(ママスパパス)
 3月24日(木)19:30
 3月25日(金)14:00/19:30
 3月26日(土)14:00/19:30
 3月27日(日)11:00/16:00
 3月28日(月)17:00

 当日3,200円
 前売(要予約)
  一般2,800円
  学生2,500円、高校生以下1,000円(要学生証)
  お連れ様割:2,500円
…(劇)ヤリナゲを過去に観たことのある方と初めての方がいるグループ※は、お一人2,500円でご覧いただけます。
  母子割:2,000円
…母と子を含むご家族※は、当日受付で手をつないだ写真を撮影、劇団SNSにて公開させていただければ、お一人2,000円でご覧いただけます。(※二名様以上、割引併用不可)


____________________おしらせ____________________

【キャンペーン】黒澤世莉を2万円で売ります【先着5名様】
http://handsomebu.blog.jp/archives/52361098.html

2016年の時間堂は7月の本公演とレパートリーシアターの【12ヶ月連続上演】

【時間堂ソシオ(共同運営者)募集】時間堂主催公演の全演目がご覧いただけます。ともに文化をつくりましょう。
http://handsomebu.blog.jp/archives/52360535.html

【演出します】
時間堂レパートリーシアター【2016.3】 『巨大なウェディング・ケーキ』『ヂアロオグ・プランタニエ』
2016年3月18日(金)・19日(土) at 十色庵
【次回本公演】「ゾーヤ・ペーリツのアパート」2016年7月29日(金)〜31日(日) 東京芸術劇場シアターウエスト

【ご利用受付中】静謐な演劇空間「toiroan 十色庵」
http://toiroan.tumblr.com/


【ワークショップ情報】2月3月
http://handsomebu.blog.jp/archives/52363216.html


以下ネタバレ

最後のジゾコさんの「わたしがドーナツ化を直してあげます」のデウス・エクス・マキナ的展開、からの、ドーナツ化した姉の暴力によって流産する。この展開がこの作品の評価を分ける部分になるんだろう気はするんですよね。

わたしは、都合のいいハッピーエンドを拒絶したい、ていう作家の気持ちが先行しすぎている気がしました。

花子と不倫相手とその夫人の対立は、本当にいいクライマックスで、とても好きです。そこから先の描き方に、越さんのトリッキーな描き方ではない、ストレートな持って行き方もあるだろうし、それが観てみたいと思いました。

ただ、最初の方で書いたとおり、トリッキーさ自体は別に悪く無いです。最後に姉と妹の対立でもう一歩深く潜れそうだから、そういうの観たいなってはなし。最後は同じく暴力で終わるとしてもね。

クライマックスのシーン、とってもいいんだけど、もうひとつ力が抜けるともっといいんだろうな、て感じました。怒りとか悲しみとかって、肩の力を抜いたほうがパワフルになると思います。

基本的にはとてもいい演劇で、満足しました。このへんは細かいことです。