【2015年12月9日更新・2015年12月5日記】長文注意・いただいたコメントを追記しました
黒澤世莉です。高校生と創る演劇「赤鬼」を終えてから「わたし演劇をやりたいです。どうしたらいいでしょうか」という、フワッとした助言を求められることが何回かありました。参考になるかはともかく、私に出来る助言をしました。同じような疑問を抱える高校生は全国にいると思いますので、少々書き換えてblogにアップします。20年前に俳優を目指した高校生で、いま東京で活動するプロフェッショナルの演出家として、いまの若者のなにかの役に立てば幸いです。
●はじめに
わたしはみなさんに、演劇をやってほしいとは思っていません。
ただ、演劇の魅力を知ってしまったので、挑戦したいと思ってもらうことは、演劇人のひとりとして嬉しいことです。この文章は正解ではなく、黒澤世莉が考えることです。別の人に聞けばまた別の意見があるかと思います。鵜呑みにせずに、自分でよく考えてください。
まず、演劇を続けたいときに、その続け方は3つほどに別れます。大きく分けて「自分のためにやる場合」と「作品のためにやる場合」に分かれます。
演劇をやりたいあなたへ
【A】趣味として
「もう演劇はやらないわ」というひとも「就職するから無理だわ」ていうひともいると思います。仕事にしようかと思って挫折することもあるでしょう。
でも、自分のための演劇はいつでも出来ます。週に一回公共施設に集まって、忙しいときは休み休み集まれるひとたちで続け、一年に一回は無料公演をする。あるいは、リーディング公演という、朗読会のような活動もできるかもしれません。生活や仕事の負担を少なくして演劇をすることはできると思います。
好きなことをする時間があるというのは、人生を豊かにします。職場や家庭から離れた人間関係を持つ。ママさんバレーや、少年野球といっしょです。趣味のつながりを持っているというのは、生活をする上でも、仕事をする上でも、いい影響を生むと思います。あなたの人生を豊かにしてくれるかもしれません。
【B】仕事として・【C】芸術家として
はじめに共通の事項を書いて、そののち分けます。基本的には俳優を目指すものとして書きます。
仕事として演劇をやるというのは、非常に厳しい道です。あるいは芸術家としてやっていくにしても、よけいに大変でしょう。他の仕事、たとえば市役所の公務員や、自動車の部品メーカーの営業なんかより、ずっとお金になる確率が少ないです。それでも挑戦してみたいというひと、挑戦は止めませんのでアドバイスをします。
まず、高校を卒業してからすぐに食える可能性はゼロです。アイドルのオーディションでも受けたほうがまだ食える可能性があります。堀北真希みたいに大きな事務所のオーディションに合格すれば可能かもしれませんが、極めて狭い道です。
なので、高校を卒業してからの進路として、演劇を学ぶか、演劇以外のことを学ぶという選択肢を選んでおくことをオススメします。学歴があって困ることはないので、大学がいいでしょうが、いろんな都合がある方は専門学校でもいいと思います。就職も可能性としてはいいと思います。なんの勉強もしない、あるいは独学というのはオススメしません。
演劇系の学校としては、可能であれば海外の学校を選んで欲しいです。もし日本限定であれば、新国立劇場演劇研修所がおすすめです。新国立劇場演劇研修所は、授業料がかかりません。日本国民の税金で運営されてますから。入所すると、毎月お金がいただけます。払うのではなく貰うのです。そのぶんがんばって成長してね、という場所です。
新国立劇場演劇研修所
https://www.nntt.jac.go.jp/play/training/
演劇研修所 第12期生を募集いたします
http://www.nntt.jac.go.jp/play/training/news/detail/151119_007813.html
願書受付期間:2015年12月7日(月)〜12月23日(水・祝)(必着)
【2015年12月9日追記】
他にもいろいろな演劇学校や、新劇の付属研究所があります。
円演劇研究所
http://www.en21.co.jp/ken_top.html
大学なら日本大学芸術学部、桐朋学園、桜美林大学、大阪芸術大学、玉川大学あたりでしょうか。早稲田、明治、立教あたりも演劇研究はさかんです。ミュージカルなら昭和音大や洗足学園もあります。新劇の養成所であれば、前述の円以外にも、文学座、青年座なんかが有名です。
重ねて本音を言えば、こと演劇を学ぶなら、日本より海外で勉強したほうがいいと思います。いい先生が多いので。語学の問題は、みなさんお若いので1年もあっちに住んで勉強すりゃなんとかなりますので、お金の問題がクリアできるならぜひ。
オーストラリアだったらこっち。
VCA
http://vca.unimelb.edu.au/
NIDA
https://www.nida.edu.au/
英国なら。
Central
http://www.cssd.ac.uk/
RADA
https://www.rada.ac.uk/
米国やら他の国のことは知らぬ。自分で調べてください。
修業の場としては、いっそ外国の街がいいと思いますが、国内であれば東京がいいでしょう。他の街の事情はよく分かりませんが、競争が激しいところが、おのれを鍛え学ぶにはいいと思います。作家としての方向が定まってから、また自分の街に帰って演劇をやるというのも面白いかと思います。
さて、演劇や演劇以外のことを学びながら、俳優を目指すとします。
まず「自分が俳優としてどうなりたいか」によって大きく変わってきます。舞台俳優になりたいのか。映画の主演をやりたいのか。夢はアカデミー主演男優賞なのか。渡辺謙と共演することなのか。夢や目標はなんなのかはっきりせず、ただ漠然と「やりたい」だけではサポートする方も困ります。本人だってぼんやりとした目標に向かってはがんばりにくいでしょう。
そのためにはまず、演劇や映画を見倒すことが必要だと思います。自分は何が好きで、何が嫌いなのか。演劇というくくりは音楽というくくりと同じくらい大雑把です。ロックなのかジャズなのかクラシックなのかで、音楽家になりたいひとの学ぶ場所も変わってきますよね。ロックスターになりたいのにクラシックの学校に行くのはあんまり効率的ではないかもしれません。無駄ではないと思いますけどね。なので、まず自分は何が好きなのか、どんな作品を志し、どんな俳優を目指すのか、それを知るためにたくさんの作品に触れたほうがいいでしょう。
たくさんの作品に触れるのが億劫な人は、この業界に向いていないかもしれません。それこそプロになったら同じ作品を何度も何度も繰り返すことになります。作品を好奇心を持って観られることも才能です。他者や作品に対する好奇心は、いくらあっても困らない重要な才能です。
たとえば、プロテニスプレイヤーになりたくて、いきなり世界最高峰のウィンブルドンに出ようとはしませんよね。地味なトレーニングを重ねながら、まずテニスのことを徹底的に学ぶはずです。錦織圭選手の試合を見たこと無いのにプロテニスプレイヤーになるっていうのは天才でないと不可能だと思います。一流のプレーを見て、学び、研究し、自分になにが欠けているのか冷静に判断し、欠けているものを得るための具体的な努力をする。そうして、小さな大会の予選にエントリーして、試合をはじめていくことになります。
地味な努力ができる人が、まず入り口に立てると思ってください。
「自分がどうなりたいか」を知ると同時に、「自分には何が向いているか」も問題になります。わたしは俳優になりたかったのですが、演出の方が向いていて演出家になりました。そういう話はいろいろなスタッフさんに聞きます。仕事を選ぶときに、自分がやりたいことを知ると同時に、自分が呼ばれたものを選んだほうが充実の人生を歩めます。
より良い選択をするためには、自分のことを深く理解する必要がありますし、自分の目標を深く考える必要があります。もっとも、向き不向きはやってみないと分からないことも多いです。あんまり考えすぎるよりチャレンジしてしまったほうがいいかもしれません。
ここから先の話は、あなたに才能と実力があることを前提で話を進めます。
【B】仕事として
たとえば芸能人として華やかな生活をしたいとか、テレビドラマや映画の主演がしたいとします。また、そうでなくても演じることでお金を得ようと思ったとします。
そうすると、自分のやりたい演劇や作品をやるというのは、困難になるかもしれません。
ギャランティーを貰える仕事を得るためには、芸能事務所に所属する必要があります。フリーといって、自由に活動する俳優もいるにはいますが、そういう俳優がお金になる仕事をもらえることはまれです。ご存じの方もいるかもしれませんが、この芸能事務所も良心的なところと悪徳なところがあって判断が難しかったりします。当然、良心的で大手の事務所は、競争率が激しくて、なかなか所属するのは難しいです。
事務所に所属して、マネージャーさんと相談しながらレッスンを受けながら、オーディションを受けて落ちて落ちて落ちて、やっと受かったら仕事になるわけです。受かったとしても、テレビドラマの主役や、映画のセリフがもらえる、舞台のヒーローがやれるなんてことは、サッカー日本代表がワールドカップで優勝するくらい確率が低いことです。大劇場でのアンサンブルというエキストラみたいな役や、通行人Aとか、そういう地道な下積みをしつつチャンスを待つことになります。
どちらかというと、演劇界より芸能界に進んだほうが、仕事になる可能性は高いと思います。似ているようでちょっと違う世界です。まだ若い皆さんでしたら、演技を学ぶより歌とダンスを学んでアイドル経由俳優行きの電車に乗ってもいいかもしれません。やりたい目標を達成するためには、時として遠回りも必要です。個人的には、そういうルートでクソヘタクソなアイドルがテレビドラマに出ているのを観ていた高校生のわたしが「テレビは死んだ、日本の芸能界は終わってる」て思ってしまっているので、あんまり好きな道筋じゃないです。
でも、まっすぐに舞台俳優の道から仕事にしようっていうのも、あまりに茨の道だからね。まだしも生き残る可能性が高そうなものを提示しました。
このルートを通る場合は、とにかく変な大人にひっかかったり、あやしい事務所に囲われたりしないように気をつけてください。
【C】芸術家として
芸能界に比べると、演劇界は比較的いい人の集まりです。そりゃそうです、あっちは金の亡者の集まり(そうじゃないひともいるけど)、こっちは夢追い人の集まり(そうじゃないひともいるけど)ですから。
わたしたち、いわゆる小劇場の作家たちは、ますますお金になる可能性は低いです。ヴィンセント・ヴァン・ゴッホという画家をご存知でしょうか。彼の作品はいまでこそ何億円もの値段がついていますが、生前は本当に貧乏をしていたことで有名です。そういう話はたくさん聞いたことがあるかもしれませんが、現代だって同じです。たとえメチャクチャ才能と実力があっても、それがお仕事になっているかとはまた別の話なのです。
*ゴッホについては、三谷幸喜さんの演劇「コンフィダント・絆」を観るとよく分かるかもね。
それこそ、やりたい作品をやるために、何年もアルバイトと演劇活動の両立を続けていかなければいけないかもしれません。そして、それが報われるとは限らないのです。むしろわたしのいままでの経験で言えば、報われない可能性のほうが高いです。
もちろん、舞台芸術出身でも、上川隆也さん(キャラメルボックスの劇団員だった)や佐々木蔵之介さん、堺雅人さんや大泉洋さん(北海道からも活躍できる証明をした)みたいに、小劇場の舞台から、舞台での活躍はもちろん続けつつ、テレビや映画でも引っ張りだこになるかたはいらっしゃいます。新劇では、渡辺謙さん(円出身)のようにアメリカで成功する方もいらっしゃいます。でもまあ、ほんとうにそんなのは、実力がある上で奇跡のような幸運を掴む一部の人だけです。
あなたが奇跡的な成功をおさめるという、無責任な約束はわたしには出来ません。可能性はゼロじゃないけど、とても低い。実力があることは大前提で、その先で運があるかどうかが問題になってきます。
あんまり暗い話ばっかりするのも、ただの口うるさいおじさんみたいになっちゃうので、希望の持てる話もしましょう。
演劇を続けることは、無理ではない。前述のみなさんは人の何倍も努力されているから生き残っているのでしょう。
あなたに才能と実力があることを前提で話を進めてきましたが、続けていける人はなにより「しつこいひと」です。やめなかったひとが、結局生き残っていきます。わたしも自分に特別な才能があったとは思いません。ただしつこく続けているうちに生き残ってしまっただけです。
個人的には、挑戦するにしても時間は区切ったほうがいいかと思います。長く続けて成功する例もあるにはあります。だけどまずは期間を区切って、その間はしっかりがんばる方がオススメです。
(2)それでもがんばりたいひとへ
さて、心が折れるような話ばかり書いてきましたが、いかがでしょうか。それでもがんばりたいですか。そうですか、物好きですね。では、具体的にアドバイスをします。
高校を卒業するまで、これができたらとてもいいでしょう。いま三年生の方は、大学を出るまでの四年間をどう過ごすか、にもつながります。
【A】作品に触れる
途中でも触れてきましたが、あらためて書きます。あなたにとって「演劇とは何か」「映画とは何か」「自分が面白いと思うものは何か」「何が素晴らしいものなのか」ということをはっきりさせます。そのために、山ほど作品に触れます。具体的には100本からが意味のある数字です。それ以下で面白いとかつまらないとか言っても、もうちょっと観てから言おうねってことになってしまいます。東京にいれば年に300本観る人もいます。まず映画演劇合わせて100本、それからそれぞれ300本くらい観て、ようやっとまともに話ができる俳優・演劇人といえるでしょう。100本は多く感じるかもしれませんが、週に2本見れば一年で達成できます。10年20年やってるひとたちは1,000本観てて当たり前です。先輩に追いつきたいと思うなら、それ以上の勢いで観る必要があります。
そうはいっても、地域によっては毎月演劇を観られるわけではないので、映像などで観ることになるでしょう。図書館などに映像アーカイブがあるところもありますので、そういうところを利用してもいいでしょう。演劇の映像作品に触れるには、観劇三昧もいいと思います。月額980円で演劇が見放題、スマートフォンから利用できます。時間堂も観られるよ。
観劇三昧
http://kan-geki.com/
観劇、映画鑑賞だけでなく、読書も重要です。本に限らずマンガでもいいでしょう。最新作やヒット作も悪くはありませんが、古典や名作と呼ばれるものに数多く触れておいたほうがいいと思います。演劇の台本は、文学上は戯曲と呼ばれていますが、これも数多く読んでおくほうがいいでしょう。シェイクスピアを一本も読まずに「プロになりたい」ていうのは、場所によっては叩かれます。ていうかわたしが叩きます。えいって。どうせ演劇の大学に入ったら古典はあらかた読まされるので、今のうちに読んでしまってください。
文学であれば、青空文庫が便利です。スマートフォンやPCから、著作権が切れた名作文学が無料で読めます。戯曲は、シェイクスピアとか岸田國士とかチェーホフとかイプセンとか検索すると出て来ます。
青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/
読書用無料アプリなどはこちらを参照。
iOS
https://itunes.apple.com/jp/app/i-du-shu-qing-kong-wen-kurida/id534970999?mt=8
Android
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.dip.sys1.aozora&hl=ja
kindle無料アプリとかでも読めるよ。
古典は、最初は難しく感じたり、面白さが分からないかもしれませんが、何本何本も読んでいくと面白さが分かってきます。最初は我慢して読んでください。一本辛いの読んだら、好きなマンガやアニメ観るみたいな感じでいいと思います。
そうはいっても古典はハードル高いよー、という残念なあなた、まだあきらめないでください。まず現代の作家から読んでください。びっくりするくらい読みやすいですよ。図書館でもamazonでもそれなりに簡単に手に入る中でおすすめな戯曲家は、永井愛さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんです。
いい俳優だけでなく、いいスタッフさんは、みんな戯曲読解に優れています。台本を読んで、それをどう具体的に落としこんでいくか。演出のイメージをどう助け伸ばし引き立てていくか。無理なことを諦め、可能なことを選択していくか。すべて読解力が基本になります。
少し話しははずれますが、可能であれば外国語を習得しておくのはいいと思います。英語、中国語が使えれば、それだけで仕事の幅は広がると思います。2020年にはオリンピックもありますし、その先も困らない技能です。
【B】身体を鍛える
身体が使えない俳優が業界で生き残る可能性は、地球に隕石が落ちて人類が滅亡するくらい低い可能性です。デブになるならデブでいいですが、動けるデブを目指したほうがいいでしょう。デブはデブで生き残る可能性があります。要は自分の身体的個性を売る仕事ですから、俳優って。美男子は美男子なりの、ノッポはノッポなりの、ちびっこはちびっこなりの個性を売り物にしていくことになります。
外見の話をすると、ものすごく具体的な話になりますが、映像をやるなら歯並びの矯正は今のうちにしてしまったほうがいいでしょう。どうせ事務所に入ったら直せって言われます。
で、自分と似たライバルたちとどう差別化していくかってことで、【A】であり【B】であるわけですよ。価値ある俳優になるためには、時間をかけるしかないです。
ヴォイストレーニングやバレエ、日舞、ジャズダンスなどもいいでしょう。殺陣やヨガでもいいでしょう。歌のレッスンでもいいかもしれません。ミュージカルを志すひとはもちろん、ふつうの舞台でも歌唱力が必要なことは多いです。
可能なかぎりいい先生を見つけてください。評判や噂を聞いて、あるいは信頼できるひとの助言を受けて、先生を見つけてください。とはいえこれも、いろんな方と関わらないとそもそも善し悪しがわからないので、まず飛び込んでしまうほうがいいのかもしれません。
そして、はじめたことは3年は続けたほうがいいと思います。自分で役に立つ、使える技術にするには時間がかかりますから。また、長く続けたものは自信にもなります。
経歴書に書いても恥ずかしくない身体の特技をひとつかふたつ持っているのは、あなたの助けになるでしょう。そこまで深められなくても、まったく身体が使えない俳優よりずっと仕事がしやすくなります。
【C】考える力をつける
これが一番重要です。
そして、これは演劇や俳優を離れても、一生あなたを助けてくれます。
強盗にあっても、地震にあっても、どんなにひどい目にあっても奪われない、素晴らしいものです。
好奇心を持つ、ということかもしれません。
いま無知であることは恥ずかしいことではありませんが、これからも無知でいてもいいや、と開き直ることは恥ずかしいことです。
ではどうやって考える力をつけるか。これはいままで書いた中でも一番難しい、正解が少ないものです。10人いれば10通りの正解があることでしょう。いろいろな方法があると思いますが、わたしのやったがこういうことをやったら成長するのかなー、て思うことをいくつか書いておきます。
・幹事
クリスマスパーティーとか、旅行とかでいいです。ひとをあつめて計画を立てて仕切ってまとめる。もちろん演劇公演の企画でもいいです。できるだけ楽しいこと、自分もまわりも楽しめることがいいでしょう。
自分で企画を立てて、まわりのひとを巻き込んでいくと、さまざまなトラブルが起きます。そのトラブルが自分を鍛えてくれます。
・旅
一人旅や海外旅行がおすすめです。英語ができない?OKOK、そのうち喋れるようになります。必要になれば人間なんだってできるようになるんです。ただし、外国は治安が悪いところもたくさんあるので、くれぐれも気をつけて。
いっそ留学もいいですね。語学も学べますし。なにより、自分とはまったく違う文化で生きている人間の社会がある、ていうのを肌で感じるのは意義があると思います。
あと、いっぱいモノを持って生きているひとは、人間トランクふたつ分の荷物があれば1年生きていけるんだな、て思うだけで気分が軽くなります。
・恋愛・結婚・育児
他人と超近距離で向かい合って生活する、ということは、価値観と価値観がぶつかり合うことになります。価値観の衝突は考える力を鍛え、生きる力を伸ばします。自分より小さな生命を守るということは、あなたにいままでとは違う世界を見せてくれるでしょう。
蛇足ですが、外国語を学びたいなら、日本語の通じないかたと恋愛するといいですよ。強制的に学びます。
【2015年12月9日追記】
【D】仲間を見つける
事務所に入ってオーディションを受けたり、フリーで活動するだけが演劇の続け方ではありません。野心を持って劇団を立ち上げてみるのもいいと思います。一般に台本を書いたり演出をしたり、という方が劇団を主宰されるケースが多いことは確かです。しかし、俳優が「これは」と見込んだ演出家を巻き込んで劇団をつくって成功するケースもないわけではありません。
おわりに
ここまで読んでお気づきかと思いますが、「プロの俳優になる」ということは「プロサッカー選手になる」とか「プロテニスプレイヤーになる」とかと同じくらい困難な目標だということです。ただ、それらが不可能ではないように、プロの俳優も不可能ではない。また、プロスポーツ選手と違って、俳優は引退がありません。続けたかったら死ぬまで出来ます。60歳まで鳴かず飛ばずでも、61歳でブレイクしたらスターの仲間入りです。これがサッカー選手だとこうは行きません。
そういう意味では、芸術家というのは一生の仕事なので、やりがいがあるかもしれません。その弊害として、先輩たちがいつまでたってもいなくなってくれないという困り事が起きたりはするんですが、コレはまた別の話。
以上が、わたしが高校生のみなさんに伝えられることです。長々とした文章を最後まで読んでくださってありがとうございました。
写真は、雲井にまがふ沖つしらなみは夕日のウテナ。伊良湖岬行フェリーより。
【演出します】
http://handsomebu.blog.jp/archives/52354763.html
言祝ぎ
2015年12月19日土 at 王子小劇場
時間堂レパートリーシアター・ワークインプログレス
2015年12月28日月・29日火 at toiroan 十色庵
黒澤世莉 (時間堂・演出家) のプロフィールはこちら:2016年のお仕事募集中
http://jikando.com/member/seri.html ご連絡は info@jikando.com まで
ワークショップ情報
*2015年で時間堂主催WSは終了します。いままでありがとうございました。
http://jikando.com/workshop.html
[演技:ベーシッククラス]
12月7日(月) 19:00〜22:00
12月14日(月) 19:00〜22:00
[演技:アドバンストクラス]
12月23日(水・祝) 14:00〜17:00
だれでも:演劇体験クラス
12月20日(日) 10:00〜12:00
【大阪】俳優:演技ベーシッククラス1月16日(土)12:00〜15:00
【大阪】だれでも:演劇体験クラス1月17日(日)12:00〜14:00
http://jikando.com/workshop/529-2016osakabc.html
【大阪】演出家や劇団主宰のためのマイズナー・テクニック入門・座学と実践
1月15日(金)〜17日(日)
http://jikando.com/workshop/528-2016osakaa.html
静謐な演劇空間「toiroan 十色庵」一般貸出スタート
http://toiroan.tumblr.com/
黒澤世莉です。高校生と創る演劇「赤鬼」を終えてから「わたし演劇をやりたいです。どうしたらいいでしょうか」という、フワッとした助言を求められることが何回かありました。参考になるかはともかく、私に出来る助言をしました。同じような疑問を抱える高校生は全国にいると思いますので、少々書き換えてblogにアップします。20年前に俳優を目指した高校生で、いま東京で活動するプロフェッショナルの演出家として、いまの若者のなにかの役に立てば幸いです。
●はじめに
わたしはみなさんに、演劇をやってほしいとは思っていません。
ただ、演劇の魅力を知ってしまったので、挑戦したいと思ってもらうことは、演劇人のひとりとして嬉しいことです。この文章は正解ではなく、黒澤世莉が考えることです。別の人に聞けばまた別の意見があるかと思います。鵜呑みにせずに、自分でよく考えてください。
まず、演劇を続けたいときに、その続け方は3つほどに別れます。大きく分けて「自分のためにやる場合」と「作品のためにやる場合」に分かれます。
演劇をやりたいあなたへ
【A】趣味として
「もう演劇はやらないわ」というひとも「就職するから無理だわ」ていうひともいると思います。仕事にしようかと思って挫折することもあるでしょう。
でも、自分のための演劇はいつでも出来ます。週に一回公共施設に集まって、忙しいときは休み休み集まれるひとたちで続け、一年に一回は無料公演をする。あるいは、リーディング公演という、朗読会のような活動もできるかもしれません。生活や仕事の負担を少なくして演劇をすることはできると思います。
好きなことをする時間があるというのは、人生を豊かにします。職場や家庭から離れた人間関係を持つ。ママさんバレーや、少年野球といっしょです。趣味のつながりを持っているというのは、生活をする上でも、仕事をする上でも、いい影響を生むと思います。あなたの人生を豊かにしてくれるかもしれません。
【B】仕事として・【C】芸術家として
はじめに共通の事項を書いて、そののち分けます。基本的には俳優を目指すものとして書きます。
仕事として演劇をやるというのは、非常に厳しい道です。あるいは芸術家としてやっていくにしても、よけいに大変でしょう。他の仕事、たとえば市役所の公務員や、自動車の部品メーカーの営業なんかより、ずっとお金になる確率が少ないです。それでも挑戦してみたいというひと、挑戦は止めませんのでアドバイスをします。
まず、高校を卒業してからすぐに食える可能性はゼロです。アイドルのオーディションでも受けたほうがまだ食える可能性があります。堀北真希みたいに大きな事務所のオーディションに合格すれば可能かもしれませんが、極めて狭い道です。
なので、高校を卒業してからの進路として、演劇を学ぶか、演劇以外のことを学ぶという選択肢を選んでおくことをオススメします。学歴があって困ることはないので、大学がいいでしょうが、いろんな都合がある方は専門学校でもいいと思います。就職も可能性としてはいいと思います。なんの勉強もしない、あるいは独学というのはオススメしません。
演劇系の学校としては、可能であれば海外の学校を選んで欲しいです。もし日本限定であれば、新国立劇場演劇研修所がおすすめです。新国立劇場演劇研修所は、授業料がかかりません。日本国民の税金で運営されてますから。入所すると、毎月お金がいただけます。払うのではなく貰うのです。そのぶんがんばって成長してね、という場所です。
新国立劇場演劇研修所
https://www.nntt.jac.go.jp/play/training/
演劇研修所 第12期生を募集いたします
http://www.nntt.jac.go.jp/play/training/news/detail/151119_007813.html
願書受付期間:2015年12月7日(月)〜12月23日(水・祝)(必着)
【2015年12月9日追記】
大森晴香@haruharuharu306@serikurosawa 新国は来年からお金かかるようになったそうだよ。月々の奨学金はもらえるけど。
2015/12/09 11:03:49
他にもいろいろな演劇学校や、新劇の付属研究所があります。
円演劇研究所
http://www.en21.co.jp/ken_top.html
大学なら日本大学芸術学部、桐朋学園、桜美林大学、大阪芸術大学、玉川大学あたりでしょうか。早稲田、明治、立教あたりも演劇研究はさかんです。ミュージカルなら昭和音大や洗足学園もあります。新劇の養成所であれば、前述の円以外にも、文学座、青年座なんかが有名です。
重ねて本音を言えば、こと演劇を学ぶなら、日本より海外で勉強したほうがいいと思います。いい先生が多いので。語学の問題は、みなさんお若いので1年もあっちに住んで勉強すりゃなんとかなりますので、お金の問題がクリアできるならぜひ。
オーストラリアだったらこっち。
VCA
http://vca.unimelb.edu.au/
NIDA
https://www.nida.edu.au/
英国なら。
Central
http://www.cssd.ac.uk/
RADA
https://www.rada.ac.uk/
米国やら他の国のことは知らぬ。自分で調べてください。
修業の場としては、いっそ外国の街がいいと思いますが、国内であれば東京がいいでしょう。他の街の事情はよく分かりませんが、競争が激しいところが、おのれを鍛え学ぶにはいいと思います。作家としての方向が定まってから、また自分の街に帰って演劇をやるというのも面白いかと思います。
さて、演劇や演劇以外のことを学びながら、俳優を目指すとします。
まず「自分が俳優としてどうなりたいか」によって大きく変わってきます。舞台俳優になりたいのか。映画の主演をやりたいのか。夢はアカデミー主演男優賞なのか。渡辺謙と共演することなのか。夢や目標はなんなのかはっきりせず、ただ漠然と「やりたい」だけではサポートする方も困ります。本人だってぼんやりとした目標に向かってはがんばりにくいでしょう。
そのためにはまず、演劇や映画を見倒すことが必要だと思います。自分は何が好きで、何が嫌いなのか。演劇というくくりは音楽というくくりと同じくらい大雑把です。ロックなのかジャズなのかクラシックなのかで、音楽家になりたいひとの学ぶ場所も変わってきますよね。ロックスターになりたいのにクラシックの学校に行くのはあんまり効率的ではないかもしれません。無駄ではないと思いますけどね。なので、まず自分は何が好きなのか、どんな作品を志し、どんな俳優を目指すのか、それを知るためにたくさんの作品に触れたほうがいいでしょう。
たくさんの作品に触れるのが億劫な人は、この業界に向いていないかもしれません。それこそプロになったら同じ作品を何度も何度も繰り返すことになります。作品を好奇心を持って観られることも才能です。他者や作品に対する好奇心は、いくらあっても困らない重要な才能です。
たとえば、プロテニスプレイヤーになりたくて、いきなり世界最高峰のウィンブルドンに出ようとはしませんよね。地味なトレーニングを重ねながら、まずテニスのことを徹底的に学ぶはずです。錦織圭選手の試合を見たこと無いのにプロテニスプレイヤーになるっていうのは天才でないと不可能だと思います。一流のプレーを見て、学び、研究し、自分になにが欠けているのか冷静に判断し、欠けているものを得るための具体的な努力をする。そうして、小さな大会の予選にエントリーして、試合をはじめていくことになります。
地味な努力ができる人が、まず入り口に立てると思ってください。
「自分がどうなりたいか」を知ると同時に、「自分には何が向いているか」も問題になります。わたしは俳優になりたかったのですが、演出の方が向いていて演出家になりました。そういう話はいろいろなスタッフさんに聞きます。仕事を選ぶときに、自分がやりたいことを知ると同時に、自分が呼ばれたものを選んだほうが充実の人生を歩めます。
より良い選択をするためには、自分のことを深く理解する必要がありますし、自分の目標を深く考える必要があります。もっとも、向き不向きはやってみないと分からないことも多いです。あんまり考えすぎるよりチャレンジしてしまったほうがいいかもしれません。
ここから先の話は、あなたに才能と実力があることを前提で話を進めます。
【B】仕事として
たとえば芸能人として華やかな生活をしたいとか、テレビドラマや映画の主演がしたいとします。また、そうでなくても演じることでお金を得ようと思ったとします。
そうすると、自分のやりたい演劇や作品をやるというのは、困難になるかもしれません。
ギャランティーを貰える仕事を得るためには、芸能事務所に所属する必要があります。フリーといって、自由に活動する俳優もいるにはいますが、そういう俳優がお金になる仕事をもらえることはまれです。ご存じの方もいるかもしれませんが、この芸能事務所も良心的なところと悪徳なところがあって判断が難しかったりします。当然、良心的で大手の事務所は、競争率が激しくて、なかなか所属するのは難しいです。
事務所に所属して、マネージャーさんと相談しながらレッスンを受けながら、オーディションを受けて落ちて落ちて落ちて、やっと受かったら仕事になるわけです。受かったとしても、テレビドラマの主役や、映画のセリフがもらえる、舞台のヒーローがやれるなんてことは、サッカー日本代表がワールドカップで優勝するくらい確率が低いことです。大劇場でのアンサンブルというエキストラみたいな役や、通行人Aとか、そういう地道な下積みをしつつチャンスを待つことになります。
どちらかというと、演劇界より芸能界に進んだほうが、仕事になる可能性は高いと思います。似ているようでちょっと違う世界です。まだ若い皆さんでしたら、演技を学ぶより歌とダンスを学んでアイドル経由俳優行きの電車に乗ってもいいかもしれません。やりたい目標を達成するためには、時として遠回りも必要です。個人的には、そういうルートでクソヘタクソなアイドルがテレビドラマに出ているのを観ていた高校生のわたしが「テレビは死んだ、日本の芸能界は終わってる」て思ってしまっているので、あんまり好きな道筋じゃないです。
でも、まっすぐに舞台俳優の道から仕事にしようっていうのも、あまりに茨の道だからね。まだしも生き残る可能性が高そうなものを提示しました。
このルートを通る場合は、とにかく変な大人にひっかかったり、あやしい事務所に囲われたりしないように気をつけてください。
【C】芸術家として
芸能界に比べると、演劇界は比較的いい人の集まりです。そりゃそうです、あっちは金の亡者の集まり(そうじゃないひともいるけど)、こっちは夢追い人の集まり(そうじゃないひともいるけど)ですから。
わたしたち、いわゆる小劇場の作家たちは、ますますお金になる可能性は低いです。ヴィンセント・ヴァン・ゴッホという画家をご存知でしょうか。彼の作品はいまでこそ何億円もの値段がついていますが、生前は本当に貧乏をしていたことで有名です。そういう話はたくさん聞いたことがあるかもしれませんが、現代だって同じです。たとえメチャクチャ才能と実力があっても、それがお仕事になっているかとはまた別の話なのです。
*ゴッホについては、三谷幸喜さんの演劇「コンフィダント・絆」を観るとよく分かるかもね。
それこそ、やりたい作品をやるために、何年もアルバイトと演劇活動の両立を続けていかなければいけないかもしれません。そして、それが報われるとは限らないのです。むしろわたしのいままでの経験で言えば、報われない可能性のほうが高いです。
もちろん、舞台芸術出身でも、上川隆也さん(キャラメルボックスの劇団員だった)や佐々木蔵之介さん、堺雅人さんや大泉洋さん(北海道からも活躍できる証明をした)みたいに、小劇場の舞台から、舞台での活躍はもちろん続けつつ、テレビや映画でも引っ張りだこになるかたはいらっしゃいます。新劇では、渡辺謙さん(円出身)のようにアメリカで成功する方もいらっしゃいます。でもまあ、ほんとうにそんなのは、実力がある上で奇跡のような幸運を掴む一部の人だけです。
あなたが奇跡的な成功をおさめるという、無責任な約束はわたしには出来ません。可能性はゼロじゃないけど、とても低い。実力があることは大前提で、その先で運があるかどうかが問題になってきます。
あんまり暗い話ばっかりするのも、ただの口うるさいおじさんみたいになっちゃうので、希望の持てる話もしましょう。
演劇を続けることは、無理ではない。前述のみなさんは人の何倍も努力されているから生き残っているのでしょう。
あなたに才能と実力があることを前提で話を進めてきましたが、続けていける人はなにより「しつこいひと」です。やめなかったひとが、結局生き残っていきます。わたしも自分に特別な才能があったとは思いません。ただしつこく続けているうちに生き残ってしまっただけです。
個人的には、挑戦するにしても時間は区切ったほうがいいかと思います。長く続けて成功する例もあるにはあります。だけどまずは期間を区切って、その間はしっかりがんばる方がオススメです。
(2)それでもがんばりたいひとへ
さて、心が折れるような話ばかり書いてきましたが、いかがでしょうか。それでもがんばりたいですか。そうですか、物好きですね。では、具体的にアドバイスをします。
高校を卒業するまで、これができたらとてもいいでしょう。いま三年生の方は、大学を出るまでの四年間をどう過ごすか、にもつながります。
【A】作品に触れる
途中でも触れてきましたが、あらためて書きます。あなたにとって「演劇とは何か」「映画とは何か」「自分が面白いと思うものは何か」「何が素晴らしいものなのか」ということをはっきりさせます。そのために、山ほど作品に触れます。具体的には100本からが意味のある数字です。それ以下で面白いとかつまらないとか言っても、もうちょっと観てから言おうねってことになってしまいます。東京にいれば年に300本観る人もいます。まず映画演劇合わせて100本、それからそれぞれ300本くらい観て、ようやっとまともに話ができる俳優・演劇人といえるでしょう。100本は多く感じるかもしれませんが、週に2本見れば一年で達成できます。10年20年やってるひとたちは1,000本観てて当たり前です。先輩に追いつきたいと思うなら、それ以上の勢いで観る必要があります。
そうはいっても、地域によっては毎月演劇を観られるわけではないので、映像などで観ることになるでしょう。図書館などに映像アーカイブがあるところもありますので、そういうところを利用してもいいでしょう。演劇の映像作品に触れるには、観劇三昧もいいと思います。月額980円で演劇が見放題、スマートフォンから利用できます。時間堂も観られるよ。
観劇三昧
http://kan-geki.com/
観劇、映画鑑賞だけでなく、読書も重要です。本に限らずマンガでもいいでしょう。最新作やヒット作も悪くはありませんが、古典や名作と呼ばれるものに数多く触れておいたほうがいいと思います。演劇の台本は、文学上は戯曲と呼ばれていますが、これも数多く読んでおくほうがいいでしょう。シェイクスピアを一本も読まずに「プロになりたい」ていうのは、場所によっては叩かれます。ていうかわたしが叩きます。えいって。どうせ演劇の大学に入ったら古典はあらかた読まされるので、今のうちに読んでしまってください。
文学であれば、青空文庫が便利です。スマートフォンやPCから、著作権が切れた名作文学が無料で読めます。戯曲は、シェイクスピアとか岸田國士とかチェーホフとかイプセンとか検索すると出て来ます。
青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/
読書用無料アプリなどはこちらを参照。
iOS
https://itunes.apple.com/jp/app/i-du-shu-qing-kong-wen-kurida/id534970999?mt=8
Android
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.dip.sys1.aozora&hl=ja
kindle無料アプリとかでも読めるよ。
古典は、最初は難しく感じたり、面白さが分からないかもしれませんが、何本何本も読んでいくと面白さが分かってきます。最初は我慢して読んでください。一本辛いの読んだら、好きなマンガやアニメ観るみたいな感じでいいと思います。
そうはいっても古典はハードル高いよー、という残念なあなた、まだあきらめないでください。まず現代の作家から読んでください。びっくりするくらい読みやすいですよ。図書館でもamazonでもそれなりに簡単に手に入る中でおすすめな戯曲家は、永井愛さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんです。
いい俳優だけでなく、いいスタッフさんは、みんな戯曲読解に優れています。台本を読んで、それをどう具体的に落としこんでいくか。演出のイメージをどう助け伸ばし引き立てていくか。無理なことを諦め、可能なことを選択していくか。すべて読解力が基本になります。
少し話しははずれますが、可能であれば外国語を習得しておくのはいいと思います。英語、中国語が使えれば、それだけで仕事の幅は広がると思います。2020年にはオリンピックもありますし、その先も困らない技能です。
【B】身体を鍛える
身体が使えない俳優が業界で生き残る可能性は、地球に隕石が落ちて人類が滅亡するくらい低い可能性です。デブになるならデブでいいですが、動けるデブを目指したほうがいいでしょう。デブはデブで生き残る可能性があります。要は自分の身体的個性を売る仕事ですから、俳優って。美男子は美男子なりの、ノッポはノッポなりの、ちびっこはちびっこなりの個性を売り物にしていくことになります。
外見の話をすると、ものすごく具体的な話になりますが、映像をやるなら歯並びの矯正は今のうちにしてしまったほうがいいでしょう。どうせ事務所に入ったら直せって言われます。
で、自分と似たライバルたちとどう差別化していくかってことで、【A】であり【B】であるわけですよ。価値ある俳優になるためには、時間をかけるしかないです。
ヴォイストレーニングやバレエ、日舞、ジャズダンスなどもいいでしょう。殺陣やヨガでもいいでしょう。歌のレッスンでもいいかもしれません。ミュージカルを志すひとはもちろん、ふつうの舞台でも歌唱力が必要なことは多いです。
可能なかぎりいい先生を見つけてください。評判や噂を聞いて、あるいは信頼できるひとの助言を受けて、先生を見つけてください。とはいえこれも、いろんな方と関わらないとそもそも善し悪しがわからないので、まず飛び込んでしまうほうがいいのかもしれません。
そして、はじめたことは3年は続けたほうがいいと思います。自分で役に立つ、使える技術にするには時間がかかりますから。また、長く続けたものは自信にもなります。
経歴書に書いても恥ずかしくない身体の特技をひとつかふたつ持っているのは、あなたの助けになるでしょう。そこまで深められなくても、まったく身体が使えない俳優よりずっと仕事がしやすくなります。
【C】考える力をつける
これが一番重要です。
そして、これは演劇や俳優を離れても、一生あなたを助けてくれます。
強盗にあっても、地震にあっても、どんなにひどい目にあっても奪われない、素晴らしいものです。
好奇心を持つ、ということかもしれません。
いま無知であることは恥ずかしいことではありませんが、これからも無知でいてもいいや、と開き直ることは恥ずかしいことです。
ではどうやって考える力をつけるか。これはいままで書いた中でも一番難しい、正解が少ないものです。10人いれば10通りの正解があることでしょう。いろいろな方法があると思いますが、わたしのやったがこういうことをやったら成長するのかなー、て思うことをいくつか書いておきます。
・幹事
クリスマスパーティーとか、旅行とかでいいです。ひとをあつめて計画を立てて仕切ってまとめる。もちろん演劇公演の企画でもいいです。できるだけ楽しいこと、自分もまわりも楽しめることがいいでしょう。
自分で企画を立てて、まわりのひとを巻き込んでいくと、さまざまなトラブルが起きます。そのトラブルが自分を鍛えてくれます。
・旅
一人旅や海外旅行がおすすめです。英語ができない?OKOK、そのうち喋れるようになります。必要になれば人間なんだってできるようになるんです。ただし、外国は治安が悪いところもたくさんあるので、くれぐれも気をつけて。
いっそ留学もいいですね。語学も学べますし。なにより、自分とはまったく違う文化で生きている人間の社会がある、ていうのを肌で感じるのは意義があると思います。
あと、いっぱいモノを持って生きているひとは、人間トランクふたつ分の荷物があれば1年生きていけるんだな、て思うだけで気分が軽くなります。
・恋愛・結婚・育児
他人と超近距離で向かい合って生活する、ということは、価値観と価値観がぶつかり合うことになります。価値観の衝突は考える力を鍛え、生きる力を伸ばします。自分より小さな生命を守るということは、あなたにいままでとは違う世界を見せてくれるでしょう。
蛇足ですが、外国語を学びたいなら、日本語の通じないかたと恋愛するといいですよ。強制的に学びます。
【2015年12月9日追記】
【D】仲間を見つける
fringe@fringejpとても具体的に書いていて、好感を持ちました。「芸術家として」は、「才能のある劇作家・演出家を見つけ、一緒にカンパニーを旗揚げする」まで踏み込んで書いてもいいかも。小劇場にも成功例は多数あります。 https://t.co/AaYyYfj40y
2015/12/08 12:58:37
事務所に入ってオーディションを受けたり、フリーで活動するだけが演劇の続け方ではありません。野心を持って劇団を立ち上げてみるのもいいと思います。一般に台本を書いたり演出をしたり、という方が劇団を主宰されるケースが多いことは確かです。しかし、俳優が「これは」と見込んだ演出家を巻き込んで劇団をつくって成功するケースもないわけではありません。
おわりに
ここまで読んでお気づきかと思いますが、「プロの俳優になる」ということは「プロサッカー選手になる」とか「プロテニスプレイヤーになる」とかと同じくらい困難な目標だということです。ただ、それらが不可能ではないように、プロの俳優も不可能ではない。また、プロスポーツ選手と違って、俳優は引退がありません。続けたかったら死ぬまで出来ます。60歳まで鳴かず飛ばずでも、61歳でブレイクしたらスターの仲間入りです。これがサッカー選手だとこうは行きません。
そういう意味では、芸術家というのは一生の仕事なので、やりがいがあるかもしれません。その弊害として、先輩たちがいつまでたってもいなくなってくれないという困り事が起きたりはするんですが、コレはまた別の話。
以上が、わたしが高校生のみなさんに伝えられることです。長々とした文章を最後まで読んでくださってありがとうございました。
写真は、雲井にまがふ沖つしらなみは夕日のウテナ。伊良湖岬行フェリーより。
____________________おしらせ____________________
【演出します】
http://handsomebu.blog.jp/archives/52354763.html
言祝ぎ
2015年12月19日土 at 王子小劇場
時間堂レパートリーシアター・ワークインプログレス
2015年12月28日月・29日火 at toiroan 十色庵
黒澤世莉 (時間堂・演出家) のプロフィールはこちら:2016年のお仕事募集中
http://jikando.com/member/seri.html ご連絡は info@jikando.com まで
ワークショップ情報
*2015年で時間堂主催WSは終了します。いままでありがとうございました。
http://jikando.com/workshop.html
[演技:ベーシッククラス]
12月7日(月) 19:00〜22:00
12月14日(月) 19:00〜22:00
[演技:アドバンストクラス]
12月23日(水・祝) 14:00〜17:00
だれでも:演劇体験クラス
12月20日(日) 10:00〜12:00
【大阪】俳優:演技ベーシッククラス1月16日(土)12:00〜15:00
【大阪】だれでも:演劇体験クラス1月17日(日)12:00〜14:00
http://jikando.com/workshop/529-2016osakabc.html
【大阪】演出家や劇団主宰のためのマイズナー・テクニック入門・座学と実践
1月15日(金)〜17日(日)
http://jikando.com/workshop/528-2016osakaa.html
静謐な演劇空間「toiroan 十色庵」一般貸出スタート
http://toiroan.tumblr.com/