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黒澤世莉です。ファシリテーターとして参加した、王子小劇場ディレクターズワークショップが無事終了しました。写真はせりチームのみなさま、左から岡田尚子さん、わし、宮崎雄真さん、田中ゆかりさん。

くわしい情報はこちら。
http://en-geki.blogspot.jp/2014/09/blog-post_21.html
俳優数名の協力のもと、既成戯曲を用いて4日間の稽古を行い、演出技能の向上を目指すワークショップ。


あんまりくわしくないね。

ということで、4日間で6チームが、アーサー・ミラー「橋からのながめ」の二幕冒頭、キャサリンとロドルフォがはじめて結ばれるシーンの作品づくりをしました。わたしも1チームとして参加しましたね。

今回の6人の演出家のためのワークショップは、全チーム初対面で組みました。ので、うちもみんな初対面。演出助手の岡田さんは、劇作家として劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作『さよならアイドル』を書いた方だそうです。すごいねー。

4日目は最終日で、10:00に集合、それから場当たりをして、14:00からショーイング、各作品を見ながら全体で意見を交換し、17:00から振り返りをワールドカフェ的に行いました。

「演出家を鍛える」という当初の目的は、果たせたような気はしていますが、その結果が出るのは10年や20年経った後だと思うので、ぜひ参加したみなさまには生き残っていただきたく思います。

おおざっぱな感想からいきますと、俳優が良かったです。これは演出家の作品ごとに、演出家のカラーが出ていたということです。これは演出家の技量にもよりますが、俳優の実力が足りない、という理由で届かない可能性もあったので、大変助かりました。若い演出家にとっては、むしろ普段よりゲタを履かせてもらっている状態だったかもしれません。いやー、この12人の俳優さんはまたどこかで仕事したいです。

そして、演出助手のキャラが立っていたのが面白かったです。これは全体として気持ちがゆるむ、意外な効用があったと思います。個人的には大変楽しみましたね。頭が切れるタイプ、実務が得意なタイプ、寡黙でやることやるタイプ、かわいいかんじ、バリエーションが豊富でした。仕事の出来不出来は差があったかと思いますが、彼らも育成される側なので、その点は問題では無いと思います。この先の実力アップに繋がってくれればいいです。

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そして演出家ですね。最終日、どのチームも精度を上げてきたな、と思いました。とはいえ、率直に言って、スタート地点が足りていないところが、そのまま不足を解決できなかったな、とも思いました。大きく言えば2つ「戯曲読解」「演出プランの準備」が不足していた、ということだと思います。

「戯曲読解」はそのまま、台本をどう読み解いたか、ということだと思います。アーサー・ミラーの企みを理解し、捨てるべきところは捨て、残すべきところは残し、隠された宝石を探し、際だたせるところを判断する。すべて正解ではなくても、ある程度のめどをつけていられたかどうかが最終日の品質の分かれ道だったかと思います。あるいは、読みはしていても踏み込みが浅く、上記の要素を発見できていなかった場合も、また埋まらないパーツに苦しむことになったようです。戯曲読解は、上演成果を上げる以前に、演出プランで楽をする方法が見つかる部分ですので、力を入れていただきたい。

「演出プランの準備」というのは、自分のプランを説明する言葉、という意味もあるし、一方で、作戦がうまく行かなかった場合の代案をいくつ持っていたか、という話にもなります。たった10分に満たないシーンでも、ワンアイディアでは十分ではない。自分の読み筋の核に、3つも4つも補助線を引いて、ようやっと形になるのがシーンです。その補助線がうまく引けるか、無理筋なのか、捨てるためのアイディアを多く持ち込めたグループが、4日目に伸びたのだと思います。

もう一点、振り返りの意見で、そうだろうなと思ったのは、初日2日目での土台作りが上手くいったグループが、4日目に伸びた、ということでした。土台というのは、このチームではなにを美学とするか共有すること、なにを重要視して考えるか共有すること、それを実際身体に落としこんでいくこと、ということでしょうか。ここで「なにをやったらいいかわからない」あるいは「やりたいことはあるけど伝えられない」になっていたチームは、やはり伸び悩んだようです。

上記までで分かる通り、演劇づくりは「稽古初日までの準備で上演の品質が決まる」のです。そこまでで本当にやれることを全部やったのか、全部やったと言えれば、あなたは自分の限界までやれたので、良かったでしょう。全部やったと言い切れない方、次から準備に全力を注いでください。それができなければ、実力以前の問題です。

そして結局、「痛みを引き受けた演出は強い」と思いました。単純に「芸術家のこだわり」と「作品の現在地」を対比したとき「作品の現在地」を展開することにより重きを置けるか、て言うことだと思います。「芸術家のこだわり」を減らすのは勇気がいることですが、それ以上に「作品の品質」を求める貪欲さこそ、演出家の素養として重要な部分、責任のとり方だな、と、学びました。

学びとしてはもう一点「稽古でやってないことは上演で出来ない」ですね。当たり前ですが、時間が短い時は、これが顕著だなあと思いました。この点は本当に、次に活かせそうです。

「演出がうまくなる方法」をよく聞かれるので書いておきます。単純に勉強してください。戯曲100本、観劇100本、映画音楽美術読書、なんでもいいから100作品、これに触れる一年を10年つづければいいんです。読み方とか効率は二の次で、まずは量です。インプットの量は、インプット・アウトプット両方の質を担保します。

ワールドカフェの部分が楽しかったですね。今回のクラスは、同じチームとは深まりますが、他のチームの俳優や演助と関わる機会が激少ないので、最後に関われて良かったです。もっと少人数で関わる時間を増やしたいけど、そうすると創作の時間が減ってしまうからね、難しいところです。そういう意味で、4日間は短いが、10日間だと参加が難しくなってしまう、その匙加減も微妙なところです。

あーまー、でも楽しかったな―。正直「おお負けするかも」とヒヤヒヤしていたのですが、チーム力で恥をかかずにすみましたね。チームづくりも演出力だなあと思った次第です。

ほんとに参加者のみなさま、ありがとうございました。打ち上げで飲み過ぎた方、ご自愛ください。そして参加者のみなさんが、これからの作品づくりで交わるところで、このワークショップははじめて「成功だった」と言えると思います。そんな時はご連絡くださいね。

またワークショップでもオーディションでも客席でも作品づくりの場でも、演劇の現場でお会いしましょう。その時を楽しみに待っています。

____________________おしらせ____________________

札幌劇場祭 TGR2014 特別賞 作品賞 を受賞しました。
ありがとうございました。
http://www.s-artstage.com/2014/tgr2014/news/2014/12/257/

劇団時間堂次回公演全国ツアー「衝突と分裂、あるいは融合」[東京 大阪 仙台 札幌 福岡]情報はこちら
http://handsomebu.blog.jp/archives/52300693.html
大阪・仙台・札幌、福岡、東京でいただいた感想のまとめです。いい感想一杯もらいました。ありがとうございます。
http://togetter.com/li/729848

ワークショップ情報
http://jikando.com/workshop.html

黒澤世莉 (時間堂・演出家) のプロフィールはこちら
http://jikando.com/member/seri.html

時間堂がつくった、演劇をみるつくる体験する場所「toiroan 十色庵」リノベーションの記録。気軽に遊びに来て下さい
https://note.mu/jikando