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黒澤世莉です。JAEAに行ってきた話を書きます。正式名称は長いですよ。「独立行政法人日本原子力研究開発機構」通称「機構」と呼ばれてます。昔は「日本原子力研究所」と呼ばれていましたが、特殊法人の整理や他の法人との合併があって、現在のJAEAの形になりました。宇宙開発をやっているJAXAも、みっつの法人が合併して出来た集団でしたね。その合併の色々も面白いんですが、それはまた別の話。

ちなみに、隣にある日本原子力発電は「原電」と呼ばれてます。機構は研究をしているところ、原電は発電をしているところ、似た感じに見えますけどぜんぜん違うようです。


JAEAのwebは以下のリンクから。
http://www.jaea.go.jp/

現在こんな画面になっててひっくり返りました。
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肝心なとき、て肝心なのは私にとってだけですが、肝心なときになにしてんですかっ。

場所は茨城県東海村。



東京からは高速道路で2~3時間くらい、そんなに遠くはないですね。敷地はとっても広いです。敷地内でも車で移動するのが普通でした。

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到着したところ、総務のNさんが迎えてくれました。全員が身分証を持って受付を済ませて、パスを貰います。出入口は本当に厳重で、施設内の移動でも、いちいち全員が名札を着用しているかチェックされます。

お話を伺っていると、911の同時多発テロ以来、ウランやプルトニウムの持ち出しにたいして厳しい監視体制がとられるようになったそうです。

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日本ではじめての原子炉、JRR-1のあった場所に案内されました。オシャレなビルでしたね。展示室と大きな講義室がありました。いまではここで、外部の方々の講習会や、わたしたちのような見学会を受け入れてくれているようです。他の施設内は基本的に撮影禁止なのですが、この建物の内外は許可されてました。

案内してくださるのは、IさんとSさん。おふたりとも研究所で長年働いていらっしゃるベテランの研究員の方々です。まず、JAEAの概要と、原子力や放射線に関する基礎知識、今回の作品のモデルになっている、日本初の発電炉JPDRに関するレクチャーを受けました。

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「時間堂の皆様」て書いてあります。なんか嬉しいですね。

「衝突と分裂、あるいは融合」は、JPDRをモチーフにしています。日本初の原子力発電炉を研究している科学者たちの、葛藤と成功、失望を描く人間ドラマ。なので、実際にそれがあった場所や、関わった方々のお話を伺えるのは、大変に大変に貴重なことなのです。

ちなみに、本作は原子力発電への是非を論じるものではありません。

そして資料の展示室へ。すごくたくさん面白い展示があるのですが、ここでは厳選してお届けしましょう。

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さてこの美女は誰でしょう。正解は現在の皇后陛下です。研究所にウランが入った記事が乗っているそうです。当時の人間を演じる私たちには、時代の感覚が分かってありがたい資料ですね。てか美智子さま美人やな。

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今回の舞台のひとつ、JPDRの制御室の写真もありました。菅野貴夫が「新幹線の運転室みたいな感じじゃないか」と言っていましたが、確かにかなり似た質感だと思いました。

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遠隔操作の道具です。放射線量が高い物質の作業はこういった機械で行うんですね。「これ本物ですか」と聞いたら「本物です」だそうです。俳優たちが大喜びで挑戦していましたが、積み木を穴に入れる作業だけでも難しそうでした。みんなが先に行ってしまい最後まで遊んでいた富田文子さんが急いで追いかけますね。

そして、行く先はJPDRの跡地。広い敷地内を用意していただいたバスで移動します。いたれりつくせり。自転車で走っている職員の方々もたくさんいらっしゃいます。

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JPDRのあった場所は、廃炉が終わって更地になっています。右側に見えるフェンスの脇に見える、小さな鉄管の四角が、原子炉の中心部だそうです。

風が強く吹いているのが印象に残りました。

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これは貴重な図面です。こういうのなかなか見つからないのでありがたい。強風の中必死で支えていただいた職員の皆様に感謝。

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説明に耳を傾けるみんなも真剣です。質問も飛び交いました。

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後列左一人目がIさん、四人目がSさんでした。予定時間を大幅に過ぎてもこちらのつたない質問に熱心に答えてくださいました。本当にありがとうございました。

伺ったお話に面白いものはたくさんあったのですが、いくつか印象に残ったものだけを書いておきます。

・昔はもっとおおらかだった。いまはいろいろと厳しくなった。○○を○んだりできた。
・昔は海岸に出て貝拾いしたり海に入ったりできた。いまはフェンスが出来て入れない
・水蒸気をあちこちに回しているボイラーは、LNGで沸かしている *あたりまえっちゃあたりまえだけど、原子炉じゃないんだ。。。
・女子研究員は30人に1人くらい。マドンナあつかい。
・JPDRは米国の製品だったので、単位が違うとか「なんでここにこんな部品があるんだ」みたいな謎が多く、大変だった
・福島の原発事故以降、風当たりが強くご苦労がお有りなんじゃないですか、と聞いたところ「そういうことはありません」とキッパリ
・「マスメディアは正確な報道をしてほしい。原発賛成にしろ反対にしろ、色がはっきりしているだけで、科学的な理解に欠けるものが多い」

もっとたくさんあるんですが、もっぱら昭和の中頃の、日本全体に活気が満ち溢れていた時代の話が面白かったです。また当時を思い返すとハツラツとお話されるお二人が素敵ですた。

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原子力というものにたいして、色眼鏡をかけないでいるのは難しいと思います。
こんなことを考えました。

・どんな技術にも利点と欠点があって、それを判断するのは科学的な知識が必要
・科学的な知識を一般市民が持つのは難しい
・マスメディアの報道は、賛否どちらかに偏りが生まれがちで、鵜呑みにするのは危ない

で、結局どうしたらいいのさ、なんてことはサッパリ分かりません。ただ、科学的に正しい知識自体は増えたので、それは良かったです。

そうやって正しい知識をふやしていくことが大切なんだろうと思いはするのですが、社会の問題すべて、たとえば集団的自衛権とか、イスラム国の問題とか、そういった複雑な問題の知識をすべて増やすというのは困難でしょう。

それでわたしは考えこんでしまうのです。はたしてわたしたちは、重大な問題を解決できるのだろうか、って。少なくとも、全問正解は不可能だと思います。となると、かならず間違えることを前提に、選択をしていきつつ、間違っていると気づいたら進行方向を変えられる柔軟さを持つのがいい、というくらいの、ふわっとしたことしか思えないのでした。

末筆ですが、JAEAのみなさまには本当にお世話になりました。ありがとうございました。

____________________おしらせ____________________

黒澤世莉 (時間堂・演出家) のプロフィールはこちら
http://jikando.com/member/seri.html

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劇団時間堂次回公演全国ツアー「衝突と分裂、あるいは融合」[東京 大阪 仙台 札幌 福岡]情報はこちら
http://handsomebu.blog.jp/archives/52300693.html

時間堂がつくった、演劇をみるつくる体験する場所「toiroan 十色庵」リノベーションの記録。気軽に遊びに来て下さい
https://note.mu/jikando