マーガレット・エドソンの初戯曲ということで、初めてこの作家の作品を読む。



ドラマなんだけど、シーンにレイヤーをかけて重層的、立体的に進んでいく。

あっさりした表現がテンポよく読ませるけど、ときとしてそれが残酷になる。
末期がんを患った中年女教授が主人公だから、医療者のサバサバ感は頼もしくも恐ろしくもなる。

長年研究してきたジョン・ダンの詩を背景に、死への一本道を淡々と歩いて行く主人公なんだけど、
鉄の女と呼ばれて事実たくましい彼女が、見失ったものや気づいたものがいちいち愛おしい。

死から逃れることはできないけれど、死に方は選べる。
おすすめ。

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あと最近読んだ戯曲、
「ダウト」ジョン・パトリック・シャンリィ


さすがジョン・パトリック・シャンリィ、深いドラマを見やすく書いている。

キリスト教系の学校を舞台に、聖職者の教師3人と保護者1人の計4人が登場。
一人の男子生徒をめぐって、なにが真実か、なにが嘘か、そしてなにが罪なのかを探り合う。
簡単で単純な答えのない問題にするどく斬り込む手際は見事。
それなのにとても読みやすいし、演じるのも(キリスト教や人種問題というというハードルはあれど比較的)入りやすいだろう。

練習戯曲としてもいいと思う。

あと「イギリス一幕劇集」も読んだ。
中身は「顧問弁護士」 「ランチ・アワー」「手荷物をお忘れなく」ジョン・モーティマー「窓」フランク・マーカス「アーニーの超幻覚症状」アラン・エイクボーン「階段の悪党」ジョー・オートン。1950年代から60年代の作品集。
つまらなくはなかったけど、不条理寄りが多くって、あんまり好みにあわんでした。