「ハンサム部」こと旅する演出家:黒澤世莉blog

Director Seri Kuroawa's blog / 旅する演出家 黒澤世莉のblog

May 2014

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大阪ワークショップオーディション初日を終えた黒澤世莉です。いい出会いがたくさんありりました。みんなありがとう。

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おりゃれカフェでランチを食べたよ。

____________________おしらせ____________________

黒澤世莉 (時間堂・演出家) のプロフィールはこちらから。
http://jikando.com/member/seri.html

劇団時間堂のwebはこちらです。
http://jikando.com/

時間堂スタジオ赤羽(仮称)オープニングイベント開催決定しました。6月13日(金)〜16日(月)、これからのスタジオと時間堂のことや、演劇公演や、トークイベントや、交流会など、盛りだくさんでお届けしますよ。
https://www.facebook.com/events/1491188157777196/

時間堂スタジオ赤羽(仮)リノベーション中。気軽に遊びに来て下さい。
https://note.mu/jikando

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まもなく大阪行きの高速バスに乗る黒澤世莉です。その後札幌が、時間堂ワークショップオーディション最後の地になります。ここまであっという間だったなあ。

あっという間だったのは、スタジオのリノベーションと平行していたからですね。間違いなく。

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そんなスタジオのオープニングイベントで、「花のゆりかご、星の雨」を上演するのです。稽古を自分達みずから作ったスタジオでやれるなんて、とても贅沢。稽古場公開やってますので、いつでも来てね。

オープニングイベントの情報はこちら
http://blog.livedoor.jp/jtc2009/archives/1905026.html

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今回の大阪さっぽろでは、王子小劇場からの密命も帯びています。ヒントはこの写真だよ。気になる人は佐藤佐吉演劇祭2014 +で検索だ。

さて、そろそろ消灯なのでこのへんで。大阪では、宝石のカレーが食べたい、にじゆらのお店に行きたい。いけるかなー。

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約束の時間に場所に行ってみて、誰もいないときの気持ちを140文字で書くためのツールがTwitterかもしれないと思う黒澤世莉です。はい、今日も適当です。

苦手をがんばる価値と意味について書きます。結論から言うと、場合によっては苦手なことをがんばるとお得だよということです。

人間苦手なことはしたくないものです。「そんなことないよ」という方はこの先読んでも意味が無いので読まなくていいです。得意なことは人より優れて優越感も持てますし、やりたがりますね。苦手なことは反対に劣等感を感じますし、避けて通ろうとするものです。人間ですからね、できれば勝てることで勝負したいじゃないですか。

しかし、です。

私はいま、演技技術としてマイズナー・テクニックというものを教えています。私はマイズナー・テクニックが大の苦手でした。マイズナー・テクニックとはじめて出会った20代前半の頃は、苦手なことにも気が付かなかったくらいです。「どうも自分はこれが出来ていないぞ」と、最初のクラスでうすらぼんやり気づいて、二度目のクラスを受け、そこでどうにか自分が出来ていないことを自覚しました。で、三度目のクラスで、ようやっと、出来るとは言わないまでも、何が出来ていないのか分かってきました。

自分が苦手であったから、いま人に伝える立場になっているのだと思います。

学校の算数で、難しい問題を、算数が得意なA君と、がんばって勉強してるBさんに聞いていると仮定しましょう。A君に聞くと「なんで分からないのか分からない」みたいなことを言われて終わってしまうことがあります。努力して理解したBさんは、自分がつまずいたポイントが分かるし、そこは人もつまずきやすいんだと理解してくれます。そのため勘所を押さえた伝え方は、Bさんの方が上手な可能性が高いと思います。

ただ苦手なことをがんばるのは難しいですが、それに明確な目的があれば、がんばることも可能になるでしょう。たとえば「次の試合に出場する」「チームのレギュラーになる」「今シーズン10得点する」とか、そういう目的が持てれば、ずいぶんがんばりやすくなります。コツは、10年とかの遠い目標と、1ヶ月とかの近い目標をうまく組み合わせてもつことです。また、がんばれば達成できるレベルに引くのも、がんばりを続けるためには大事です。無理な目標は空手形になってしまいますからね。

でも、闇雲に苦手なことをがんばればいいのかって言うと、そういうことでもない気がします。二点、相性リーダーです。

例えば私はサッカーを見るのもやるのも好きですが、致命的に下手くそです。これはいくらがんばっても、仕事になるレベルにはならないでしょう。趣味でやるぶんにはまったく問題ないですが、苦手なことを仕事にするくらいがんばるのは、ひょっとしたら幸せなことではないかもしれません。

演劇はとても好きですし、マイズナー・テクニックは苦手でも、その苦労自体は好きというか、充実感を持って取り組めました。それ故続けられたのだと思います。

物事には何事も相性というものがあります。これはシビアに考えなくてはいけません。私はサッカーが好きですが、これを仕事にしようとしたら、おそらくすごくがんばった割に報われない結果になっていると思います。

もうひとつのリーダーですが、世の中には優れたリーダーがたくさんいる反面、残念なひとたちもまた存在します。いくら苦手なことをがんばると実力がつくっていっても、ブラック企業で必死に飛び込み営業をすることが、自分の何を鍛えてくれるのか、そこは冷静に判断した方がいいでしょう。一度がんばると決めたからには何年かがんばるべきだとは思いますが、それが他人を殺すはめにつながるようでしたら、辞める勇気も必要です。

私とマイズナー・テクニックについては、柚木佑美さんという優れた指導者に出会えたことが幸運でした。柚木さんはいまもクラスを定期的に開催しているので、おすすめします。
http://actorsworks.jimdo.com/

というわけで、苦手なことをがんばるのは憂鬱かもしれませんが、その目的がはっきりしていれば我慢もできますし、我慢が結果につながればハッピーになります。どんな目的であれ達成するのはハッピーなものです。

ただし、あんまり相性が悪いものや、あんまり信用出来ないリーダーの場合、注意が必要です。やると決めたらがんばる方が幸せにちかづくとは思いますが、その判断はなるたけ冷静に現実的にやってください。

最後に。なーんもがんばんないとか、得意なことだけやるっていうのもひとつの生き方だとは思いますが、その生き方で80歳で死ぬときに、いいイメージを持てる方だけにおすすめします。

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もうすっかり夏だな、とおっしゃられている、雑司が谷警備隊と日夜激しく争っている黒澤世莉です。

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つい最近まで、外に出ると寒くて仕方がなかったのに、いつのまにかずっと外に出ていたいですね。ほんとうに、一年で一番良い季節です。

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リノベーションしながらも話していたのですが、夏だったら汗だくだったし、冬だったら凍えていたでしょうから、この時期に作業できて幸運でした。同時に、職人さんは年中無休だもんなあ、と思って、頭が下がる思いです。

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ハーゲンダッツ、やっぱり他のコンビニに比べて、セブンイレブンのが7円安いです。

苦手なことをがんばることの価値と意味について、書こうと思ったのだけど、今日は日曜日します。みなさまよい月曜日を。

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黒澤世莉です。いつのまにやら夏空ですね。そりゃ日も長くなるわ。来月は夏至ですって、信じられますか、みなさん。

他人と有効なコミュニケーションを取るためには、自分をしっかりと持ってないといけない。自分をしっかりと持つというのはつまり、自分が何を求めていて、何を欲していて、を知ってあげるということ。

コミュニケーションは相手に合わせることだと思い込みがちだけど、相手に合わせるのはコミュニケーションというよりは従属で、従属はむしろコミュニケーションの不在になる。だって、相手の要求にほいほい合わせるだけだもの。そこに判断も賛同も批評も、ましてや葛藤や衝突はないわけで、相互のやりとりがない。相互のやりとりがコミュニケーションだと思う。

じゃあ自分の価値に頑固であればいいかって言うとそれも違って、相手の要求に対して全部自分の要求を通すっていうのは、これもコミュニケーションではない。理由は前述のとおり、そこには相互のやりとりがないからね。

つまり、相手と対する中で、何が譲れない価値で、どこは柔軟に合わせて良くて、相手の重視するものは何で、それに対して自分も大切にできるか、できないのであればなぜ出来ないのか、はっきりさせていくことが大切なんだと思う。

ただ反対すりゃいいとか、言うこと聞きゃいい、ってのは、コミュニケーションとは対極にある発想でね。

で、ひとといちいち価値観をすりあわせるのは、ひじょーにめんどい。このひじょーにめんどいことを進んで受け入れていける人が、価値観の違う他人と関係を築くために必要な最低条件であり、唯一必要な能力なんだと思う。頭の善し悪しとか、言葉の上手い下手は関係ない。関係ないっていうか、そんなのは二の次の問題だ。

自分をしっかり持って、かつ、相手を尊重し、相手が大切にしていることを理解し、あるいは理解しようと努力し、意見がわかれた時に粘り強く調整する能力。これは下手に決断する能力よりも、よほど価値を産む能力だと思う。

集団でなにかをつくろうとか、ビジネスで成功しようとか、そういう目標がある人は、ここがんばったほうがいいとこだと思う。

そんでこのめんどいことを楽しめる人は、かなり、素敵。私は好き。

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時間堂 黒澤世莉です。たまにはまじめに演劇のことを書きましょうかね。

時間堂はただいま、自分たちのスタジオをリノベーションしています。詳しくはこちらをごらんください。
時間堂スタジオリノベーション
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「時間堂は演劇をつくる団体です 」て団体概要に書いてあって、演劇をつくる団体が、それをつくるための場所をつくる、てのは理にかなったことだと思う。

いろいろ計算してみたんだけど、演劇を観る人はやっぱり少ない。し、これからも爆発的に増えるってことはないだろうと思う。でも、新しいファンを獲得していかないことには、そもそも誰に向かって演劇をやっているのか分からなくなってしまう。別に百万人に見てほしいなんて話じゃなくて「愛してくれる千人」がいれば、活動が続けられるんじゃないかと思う。し、それでいいんじゃないかとも思う。

そういう成功例はあるのか。あんまり見たことはない。でも、業界での常識に縛られていたら、いつまで活動できるか危うい。これは演劇にかぎらず、どんな分野であっても同じだろうと思う。

私たちが場所を持つのは、引きこもるためではなくて、そこから出ていって新しい出会いをモリモリ増やすため、だと思う。そのために自分たちの拠点を活かして力を蓄えて、よりよい作品をつくる。同時に、つくったものをより多くの方にお届けできるような仕組みづくりも考える。

演劇をお仕事にしている、演劇屋さんのロールモデルになって、演劇はお仕事にできるんだ、ていう証明をするのが、ここ3年の目標です。

すでに雇用が出来ている、「劇団衛星」や「地点」もあるから、演劇を仕事にすることは可能だと思う。もちろん仕組みは二劇団でも違うし、うちもまったく別の形になるだろう。演劇を仕事に生業にする劇団を増やすのは、中堅劇団の義務だと思う。

もちろん、戦い方はそれぞれだから、自分たちだけが正解だとは思ってないし、みんなが違う挑戦をしていけばいいと思う。堺雅人みたいな売れ方の可能性もいいし、エンターテイメントとして名を馳せてもいいし、アーティスティックな作品づくりで助成金や公共劇場とダッグを組んでもいいだろう。もちろん、本業となる仕事をしながら演劇活動をするのだって構わない。

でも、バイトをしながら演劇をして、疲弊して去っていく前に、工夫してがんばれば仕事として演劇活動が出来るんだ、ということが伝えられればいいなと思うし、そのためには自分たちがまずそうならないなといけない。

というわけでがんばります。

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ハーゲンダッツのカップアイス、他のコンビニは284円税込みだけど、セブン-イレブンだけ270円代で売ってるよなー、と思っている黒澤世莉です。というわけで話題の野菜ハーゲンダッツをさっそく食べてみましたが、このシリーズの値段はふつーに284円だったので、わざわざセブン-イレブンまで行かなきゃよかったです。

キャロットオレンジを食べたよ。美味しいけど、もっと美味しいアイスはあるよねーと思いました。リピートはしないと思いますが、話のネタにひとつくらい食べるのはいいと思います。

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仙台といえば、あまんざですよね。チョコエクレア美味しゅうございました。

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時間堂ワークショップオーディションで伺った、宮城野区文化センターでみつけたポスター。西海石みかささんのワークショップは楽しいので、踊ったことなんかないけど、なんか楽しいコトやってみたい、新しいこと始めたい、仙台近辺の方は行ってみたらいいんじゃないかな。

http://www.stks.city.sendai.jp/hito/WebPages/osirase/miyagino/2014miyagino-danceWS1/2014miyagino-danceWS1.pdf
公式リンクはこちらですがPDFしかないんですかね、行政のみなさん、こういった情報はぜひテキストで見られるようなご配慮をですね、お願いしたい所存ですよ。。。

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アンパンマン? 人違いですよ。

【20140518追記】
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昨日近所のセブン-イレブンに行って、やっぱり税込み277円だと確認してきましたー

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黒澤世莉は仙台にいます。原西忠佑さんですね。

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ワークショップオーディションも3都市目。今回も楽しい出会いがたくさんありました。

日本は広いですね。仙台のみなさま、ありがとうございました。滞在18時間で離れます。次回は9月に。

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雑司が谷の治安に目を光らせている警備隊ににらまれている黒澤世莉です。

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月がまばゆいですね。そりゃ猫の目も光りますよ。

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高知アイス、最近食べたアイスの中では一番のヒット。ゆずと黒蜜きなこ、どちらも美味しかったです。高知は梅原真さんのこの記事を読んでから、やたらアンテナに引っかかってきます。四国行ってみたいなあ。四国の仕事募集中でーす。

「シアワセのものさし」持ってますか?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20091021/207732/


これから仙台に移動します。リノベーションの最大のクライマックスを見られないのは心残りです。

コンクリ面に床を敷く【実践編】 大工さんの匠の技が見られるよ
https://note.mu/jikando/n/n89f8ff555ae5

コンクリ面に床を敷く【自立編】 自分たちだけで床を作るよ
https://note.mu/jikando/n/n4485312097c7


でも、それ以上に仙台のひとびとに会えるのが楽しみです。10-BOXには行くぞー。誰かに会えるといいなあ。

宣伝志(孔明大活躍)
時間堂スタジオ赤羽(仮)リノベーション中。お手伝い募集。とくに5月12日(月)人手ほしいよ。技術がなくても大丈夫。楽しいよー。
http://handsomebu.blog.jp/archives/52277555.html
5/12~15→床張り。リアルタイムな計画の進行はこちらにて。機材募集してます。ほぼ毎日更新中。
https://note.mu/jikando

【ありがとうございました】明日は仙台で開催する時間堂ワークショップオーディション。全国5都市にて、たくさんのご応募ありがとうございました。無事締め切りとなりました。ご応募いただいたみなさま、拡散にご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。http://handsomebu.blog.jp/archives/52273069.html

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甲板に出て、ぼくは二度目の忘れ物に気がついた。何か一つものを取りに帰ると、別のものを持ってきて本来の目的を忘れてしまう。今度はライターを取ってきて、ゆべしを忘れてきてしまった。自分のひどさに呆れつつも、どちらかといえば安心していた。日本のアパートならば叩き出されるだろう、大声で笑っている白人から逃げられたし、なによりあの子に声をかけるタイミングが少しばかり遅れたからだ。

ぼくが場違いな豪華客船に乗ってしまったのは、ヘルシンキのドミトリーで食中毒になった日本人から権利を譲ってもらったという、ただそれだけの単純な理由だ。北欧まで来たのだからオーロラは観たいと思っていたが、清貧のバックパッカーとしては陸路を考えていたし、実際そうするつもりでヘルシンキまで来た。しかし、タダでくれるというものを断る理由もない。こうして、ヘルシンキからセントペテルスブルグまでの短い航海が始まった。イブニングドレスを着た連中がうろうろしている船に、ユニクロのダウンジャケットを着ているぼくはいかにも分不相応だったが、本当の金持ちというものはそういうことを気にかけないらしく、居心地が悪いながらもめったに経験できない贅沢を満喫していた。とはいえ天候はぐずつき、肝心のオーロラはどうやら見られないようだ。

福島出身のぼくは、ままどおるを勧める同郷の人間が理解できない。くるみゆべしのほうがずっと好きだからだが、それは個人の嗜好であって、ままどおるを好む人間にぼくがとやかくいう筋合いはない。ただ自分がおみやげをあげようというときには、かならずゆべしを選ぶというだけだ。

三度目の正直でゆべしをポケットに突っ込み、甲板に出ると、けたたましい白人の若者たちの声は気にならないくらい遠ざかっていて、何組かの老年夫婦と、そこから少し距離を開けてあの子が立っているだけだった。空を見るとやはり雲が残っていて、オーロラはみられないだろう。それでもいい、と思った。

ゆべしを渡す、それだけの行為に逡巡し、ぼくは三本の煙草を灰にする。彼女もダウンを着ているが、それはモンクレールのロングコートで、ぼくのユニクロの軽く三〇倍はする代物だ。天を仰ぐと、気のせいか少し雲が晴れたような気がする。いよいよ意を決して彼女に近づいていく。一歩一歩の足取りが重いのは、凍えのせいかもしれない。氷点下のなかで喫煙をし、血行は最悪に悪く、つま先の感覚はなくなっている。そのくせ鼓動はやけに早く、脇の下を汗が伝っている。深呼吸をすると冷気が喉まで入っていくが、灰にまでは全然落ち込んでいかない。

声が聞こえるくらいの距離まで近づくと、ずっと一人で立っていた彼女に、親しげに近づく男に気が付いた。手には湯気の立つカップを持っていて、それがヴァン・ショーであることはそこそこ近づいていたぼくには匂いで分かった。いや匂いなんかかんじられなかったのかもしれない、あの子に温かいヴァン・ショーを渡す、そんな役割を夢見ていただけかもしれない。ただ舳先まで来たかっただけですよ、というていでカップルの並びに立ち、それとなく微笑み合う。あの子は何事かを話しかけてくれたが、ぼくにはさっぱり理解できない。喋れるフランス語はウィとメルシーだけだったので、とりあえず「ウィ、メルシー」とだけ言う。ぼくのユニクロの一〇〇倍はしそうなイブサンローランのカシミアのコートをきた彼と彼女は大笑いしながらなにごとかを話してくるから、ぼくも日本人らしく曖昧に微笑みながら、ウィとかウーとかアーとか相槌のようなものを打つ。ポケットに入っていたゆべしを開けて、食べようとすると、それはアイスになっている。もう二度とゆべしを凍らせて食べるのをやめようと思いながら、ぼくはそれをガリガリと噛み砕く。

雪が降ってくる。空を見上げると雲ひとつない。そんな馬鹿なことが、とカップルと顔を見合わせると、遠くから怒号と破裂するような笑い声が聞こえてくる。振り返ると、何かを盛大に燃やしながら、にぎやかな白人が逃げ回っている。新聞紙か何かの灰が一層たくさん降ってきた。ぼくは彼らに大声で「馬鹿野郎」と言って、それから苦しくなるくらい大笑いする。気が付くとカップルは去り、周りには誰も居ない。煙草の中を見ると残りは七本。

この七本を吸いきるまで、待ってみよう。

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