ほぼ週刊ハンサム部

Director Seri Kuroawa's blog / 演出家 黒澤世莉のブログ

May 2012

前回の続き。

すべての演出作品に全力で投球しているし、すべての劇団公演に全力を投入している、なんてことは当たり前で、語るべきことでもない。また、関わったすべての公演を愛しているし、それが劇団公演ともなれば当たり前で、1本目から22本目の「星の結び目」まで、全部がかわいい我が子だ。すべての関係者には感謝してもしきれないし、受けた恩はどこかで返していくものだと思っている。

その上で。
「ローザ」という作品が自分にとってどういう位置づけか、と言う話をする。結論としてはいま私が演劇だと思っていること、を詰め込んだ作品だ。

台本を書いている、ということは、この作品を語る上で重要ではない。作品の重要な部品ではあるが、設計図である。実際に立ち上がるものは俳優である。

私が演出をするときに、その台本が要求する核を捉える。核に応じて作品の方向性が決まる。だから作品によって演劇の指向性が違うことは当たり前だ。が、作品稽古への入り方はいつも同じである。俳優同士のシンプルな関係性を芯に置く。

入口は同じでも、方向性が違うから、結果としては全然ちがう手触りになる。台本も違えば俳優も違う、作品が同じ劇団の公演でも、似ても似つかないものになるのは当たり前だ、と私は思う。それは方向が定まらないのではなく、「脚本の核を俳優同士の関係性で浮かび上がらせる」という哲学があっての当然の帰結だ。

「ローザ」という台本が要求する核は「想像力で限界を突破する」こと。それは俳優の仕事に直結する。つまり、俳優は演劇を作りながら、その演劇を破壊するという行為を要求されている。

そんなことが可能なのかどうか、私には分からない。分からないから、やってみるしかない。やってみることが、分からないまでも、突破する可能性のよすがになると考えている。

「ローザ」という作品で要求される「限界を突破する」こと。それに挑戦するという過程にある俳優。それは、時間堂と黒澤世莉の演劇の入口であり本質である「俳優同士の関係性」と「それに伴い生まれる熱量」を、今まで以上に要求している。

また、もともと分かりやすい構造ではない台本なので、「伝えやすくする努力」はしなくていい、というか、そういうことじゃない部分を掘り下げないと、面白くもなんともない作品になる。

「ローザ」は書かれている言葉を伝える作品ではなく、書かれていない存在を現前させる情熱を伝える作品だ。

「俳優の関係性」ということだけが、掘り下げていった黒澤世莉のなかにある楽しいおもちゃだ。それを、それだけをつきつめられる「ローザ」という作品を、私は愛している。一人でも多くのひとに、この作品が観てもらえますように。

千秋楽マチネ、開演まで後57分。ソワレまで5時間28分。

東京公演18ステージも、気がつけば残すところあと2日4ステージ。40分後には15ステージ目の幕があがる。

「月並みなはなし」「廃墟」「星の結び目」で、自分の中で演劇に対する優先順位がいつのまにかに変わっていた。本当に突き詰めたいことではなく、他の要素に時間をかけてしまった。

「ローザ」は劇団員だけの四人芝居。いままで突き詰めそこなっていた、時間堂の、黒澤世莉の演劇を突き詰めよう、と作ってきた。

演劇とは、俳優と観客のことだ。

俳優がいるということ。
舞台に立つということ。
観客と関わるということ。
生命の燃焼。
関係性。
演劇を楽しということ、大人として楽しむということ。
枠組みを作ること、それをぶっ壊すこと。
「演劇になる」ということ。

それがどのような結果になったか、観ていただければ、とても嬉しい。

おかげさまでご好評いただいてます時間堂「ローザ」新作台本演出はほんとーに久しぶり。やりたいことをギューギューに詰め込んだ、お気に入りの作品になってます。これもって全国ツアーでるのは楽しみすぎて眠られぬのですが、その前に東京公演、まだあと6回、本日15:00 / 19:00[追加公演]、28(月)15:00 / 19:00、29(火)15:00[追加公演] / 19:00、あるので、目撃してほしい。

追加公演&リピート割
●5/27(日)19:00●5/29(火)15:00の追加公演に限り、1,500円でご覧いただけます

追加公演が決まったよ。わーわーわー。

追加が決まったことも、みなさまにお越しいただいたお陰です。ありがとうございます。前半にお越しいただいた方、「ローザ」がどういう旅路をたどっているのか、現在地をご覧頂きたくてリピート割を設定しました。ぜひご利用下さい。

感想まとめ
http://togetter.com/li/304785
togetterという、Twitterをまとえるサービスで「ローザ」にいただいた感想をまとめました、よ。

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「ローザ」という作品について。
語りたいことは正直もうあんまりない。時間堂がやりたい演劇に、とにかく近づこうとしている。

「過程に在る」

ということが唯一「演劇になる」という行為に類するのだと。

いままでの時間堂を期待すると、あり部分で超裏切られ、他の部分で激納得する、そんな作品です。

どこまで行けるかなー。
行きてーなー。



この作品で、この世の果てまで。

時間堂「ローザ」上演中ですが、来月2012年6月にサンフォード・マイズナー・テクニックのクラスを持つのでお知らせします。ENBUゼミナールさんの主催事業で、今年1月に続いて2度目の開講となります。大変だけど楽しいクラスです。ご参加お待ちしております。


以下転載です。
http://stage.corich.jp/bbs/detail.php?sure_id=6908&sv=

この度ENBUゼミナールでは、マイズナー・テクニック講座・第二弾を開講いたします!

今年1月に開講し、大好評だったこの講座。
前回のご参加者からは、「演技の根本が変われた。」「できるだけこれを続けたい。」
などの感想をたくさんいただきました。

ぜひ、この機会にマイズナーを体験してみませんか?

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6月開講『マイズナー・テクニック講座』

■講師:黒澤世莉(くろさわせり)/劇作家・演出家(時間堂)

■日程:全10回(1回3時間)
6月1日(金)  12:30〜15:30
6月3日(日)  12:30〜15:30
6月5日(火)  12:30〜15:30
6月7日(木)  12:30〜15:30
6月8日(金)  12:30〜15:30
6月11日(月) 12:30〜15:30
6月14日(木) 12:30〜15:30、16:00〜19:00
6月15日(金) 12:30〜15:30、16:00〜19:00

■料金: 31,500円(税込)

■定員: 12名(先着順)

■場所: ENBUゼミナールスタジオ



★詳細・お申込はホームページへ↓★
http://enbuzemi.co.jp/course/meissner/

★お申込・お問い合わせは、メール・電話でも承ります↓★
【Mail】enbu-info@enbuzemi.co.jp
【TEL】03-5358-5211(平日10:00〜22:00、土日10:00〜18:00)

ご応募お待ちしております!

ENBUゼミナール事務局
http://enbuzemi.co.jp/

「演出」ってなんだろう、と考える。

いま、目の前に胎動があって、でもスポーンと生まれないのでジリジリしている。いまは熟練した産婆さんのように、用意周到に準備ししつつ産気を待つしかない、という話をこれから書きます。結論は愛です。

演劇をやっていない方のために説明しますと、「演出」というのは、映画でいう監督、オーケストラでいう指揮者、スポーツチームの監督にあたる職業です。「自分は出ないけど作戦立てたりあーだこーだ言ったりする」仕事ね。

俳優とかスタッフに、あーだこーだ言うわけです。



演劇づくりの現場に関わる人はすべて「作品への献身」のためにいて、それ以上でもそれ以下でもない。

演出家は、作品のために、あーだこーだ言う。
俳優やスタッフも、作品のために、聞いたり聞かなかったり、出来たり出来なかったりする。
で、またあーだこーだ言う。

観て話す仕事に、どれほどの意味があるのかと。
いや、そうではない。そこは疑ってない。

「演出」なんて仕事は200年前には存在してなかったわけで、いまでも歌舞伎にはないわけで、集団のリーダーや長老が、俳優と演出を兼ねているような塩梅であった。とすれば、絶対必要なものではないわけだよ。

とはいえ、それが生まれて、世界中に広がったということは、相応の理由があるはず。だし、他の分野に演出のような職種があるということは、「客観的に観て、哲学と技術を持って集団や作品をまとめる」作業には価値があるのだろう。

つまり、何を観るか、何を言うかを考えているということだ。
具体的な、変更可能なことを言う。あるいは、抽象的な、不可能なことを言う。

この問に正解はなく、また効果的か否かも対象、集団、時間と場所と、それによって変化することだろう。定量化出来ないところが面白いところでもあり歯がゆいところでもある。

そう。
技術は伝えられるし、外形を整えることは出来る。
でも、そういう次元ではない問題は解決に時間が掛かる。
そして、演劇においては、つねに時間は有限であり、初日の幕は必ず開く。

「鑑賞者が、自分でもそれが欲しいと分かっていなかったものを、提示する」のが芸術の役割の一つで、そんな困難なことが簡単にできるわけがない。頭も体も心も、自分の能力をフル活用しても追いつくかどうか。フル活用しているという過程を踏むこと、継続することが唯一それに到達する方法だろう。

私にもっと演出の技量があれば、みんなにもっと短距離で進める道を伝えて、作品に貢献できるかもしれない。けど、そんなことは言っても詮無いことだし、そんな短距離走の作品作りなんか嫌いだー、時間を掛けてじっくりつくろうぜ、と思いながら演劇をやっている。

私は私でしか無いし、また私に出来ることはやった。パズルのピースは揃っている。その確信はある。ピースが揃ってないと思い込んでいたら出来るものも出来ない。でもいまは揃っているのだ。

だから、続ける。やる。待つ。それの誕生を信じる。初日の前に来ることを。

愛だろ、愛。

時間堂「ローザ」にむけて連日稽古でござるよ。いよいよ一週間を切って、18日(金)20:00の公演はお陰様で完売御礼となりまして、ありがたいかぎりでございます。ご予約はこちらっす。
http://ticket.corich.jp/apply/34415/005/

そんでワークインプログレスという公開稽古にもたくさんお運びいただいちゃいまして、猛烈にネタバレしていますが良かったらご覧ください。85分くらい。


Video streaming by Ustream

そんで、
豪華トークゲストが決まったので告知文をオフィシャルから転載しますよ。と。

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「ローザ」ポストパフォーマンストーク、ゲスト発表
本公演終演後のPPTでは、黒澤世莉とすばらしいゲストの方でお話しします。楽しいトークになると思いますので、ぜひ足をお運びください。公演のチケットか半券を持っていらっしゃる方は、無料でご参加いただけます。

*PPTとは、演劇作品をつくる側と観る側をつなげる気軽なお話会のことです。
終演後、作品についてやその日のテーマに沿ったお話、お客さまからの質問など交え、30分間程度を予定しております。参加費は無料となっておりますのでぜひご来場下さい。

5月
16日(水) 19:30 大岡淳 演出家・批評家・パフォーマー
黒澤世莉コメント
急遽、オープニングレセプションにスペシャルゲストとして、SPACからお越しいただけることになりました。20分くらい、楽しくお話伺って、「ローザ」という作品についてお喋りしていただき、その日の交流会が充実したものになる手助けをして頂きます。

大岡淳ブログ「日本軽佻派・大岡淳と申します」
http://d.hatena.ne.jp/ooka/

17日(木) 19:30 辻村優子 俳優
黒澤世莉コメント
辻村さんは俳優さんです。今回お願いしたのは、すばらしい切り口でお話ししてくださるからです。ワークインプログレスに来ていただいたとき、あまりに切り口が鮮やかなもので無理を言ってお願いしてしまいました。私はかなりの数のトークをやってきましたが、こんなに面白くてためになる語り手はめずらしいです。「ローザ」という作品についてお話することになるかと思います。お楽しみに。

辻村優子ブログ「つじこまめ」
http://ameblo.jp/tsujimura-tsujiko/

司会:原田優理子

19日(土) 15:00 野村政之 ドラマターグ
黒澤世莉コメント
前回に続き2度目のご登場です。今回演出協力としてご参加いただきました。参加していただいて、過程が作品そのものになる、過程を捉えないと意味が無い。というようなお話を伺って、演劇に対しての誠実さがすごいなと思いました。作品のことだけでなく、今回関わってみてどんな印象をもたれたのか、大変だったことや楽しかったことなど語っていただければ面白いなと思います。

ブログ「幻実の時間」
http://illualize.exblog.jp/i3/

Twitter
https://twitter.com/#!/nomuramss

司会:原田優理子

19日(土) 19:00 寺尾格 ドイツ文学者
黒澤世莉コメント
専修大学経済学部教授、ドイツ文学、ドイツ現代演劇がご専門です。毎年ドイツに行かれて演劇を観まくっていらっしゃいます。ドイツに疎い私たちのために、はるばる稽古場まで来ていただいて、助言をお願いしました。物腰明るく接していただいて、緊張していた私たちへの気遣いに恐縮しました。「ローザ」という作品にはじまって、現代ドイツ演劇のお話も伺えるかもしれません。

寺尾格教授web
http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~the0372/
司会 ヒザイミズキ

*敬称略

突然気づいてしまった。

私は絵画や写真など、いわゆる鑑賞する芸術にあまり心動かされることがない。その理由に突然気づいてしまった。

固定されているもの、に興味を惹かれない。
揺れ動くものに心を動かされる。

絵画は固定されている。
音楽ライブは揺れ動いている。

映像は固定されている。
演劇は揺れ動いている。

何が起きるか決まっているもの、もう決定しているもの面白がれない。
何が起こるかわからない、筋立てや楽譜は決まっているけど、セットが倒れたり、停電したり、お客さんが苦しみだしたり、そういう可能性があるもの、が面白い。

とはいえ、小説やマンガは大好きなので、これだけでは説明出来ないんだけど。

というようなことを「ローザ」について野村政之さんと話したことを反芻している時に、突然思ったよ。

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せんでん
ブログがこんなに滞っているのも、時間堂ブログに演出ノートを書いているからだよ。
http://blog.livedoor.jp/jtc2009/archives/cat_42566.html
時間堂ブログはワークインプログレスに来た方の感想も面白いのでオススメです。

時間堂「ローザ」チケット好評発売中ですよ。18(金)、19土、20日、あたりが完売しそう、狙ってた方はお早めにっ。
http://blog.livedoor.jp/handsomebu/archives/52086654.html
全国ツアー情報も載せてみたよ。

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